元気輪輪 競輪男子109期、女子110期 九州勢7月デビュー

西日本スポーツ

 今年3月、日本競輪学校(静岡県伊豆市、滝沢正光校長)を卒業した男子109期生50人と女子110期生22人が、7月に全国各地でデビューする。九州勢は男子5人と女子2人の計7人。デビューを今か今かと待ち望む選手たちの素顔に迫った。 (後藤正則)

 ■瓜生崇智 熊本 地元を勇気づける

 瓜生崇智(うりう・たかとも)は高校時代、自転車競技で無敵を誇り、数々のタイトルを獲得したエリート。ところが、競輪学校の受験に2度失敗。それでも「三度目の正直」で合格すると、鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように才能が爆発。入学後最初のトーナメント戦で優勝してみせた。

 最後の卒業記念でも大暴れを宣言。だが準決勝で敗れ「まだ課題ばかり」。悔しさをあらわにしたが、この屈辱が今度は、デビュー後の起爆剤になるだろう。

 卒業後には悲劇に見舞われた。4月の熊本地震だ。熊本市内の自宅は崩壊こそ免れたが、10日間ほどは車中泊。さらに、被災した熊本バンクは練習に使えない。それでも「できる範囲で、やることはやっている」と、師匠・合志正臣らと久留米競輪場へ“出稽古”。悲運に屈せずひたむきだ。

 「僕は競輪選手。競輪を通して勇気を与えたい」。支部の先輩・中川誠一郎は、5月にG1を初制覇し五輪へ旅立った。若い力も、一走入魂で被災地へ笑顔を届ける。 (デビュー戦は3日~高松)

 ■嶋田誠也 福岡 高いレースセンス

 嶋田誠也(しまだ・まさや)は高校時代に見た父・誠さん(41期)の引退レースに感銘を受け、同じ道を歩むことを決めた。「人間としても尊敬する父が、家族のために走る姿を見て感動した。自分も誰かに感動を与えられる選手になりたい」

 自転車競技は未経験ながら、入学した競輪学校では、名選手の2世らしい高いレースセンスを随所に披露した。まくりや追い込み戦を主戦法に、成績は安定して上位に位置。男子の郷土勢で唯一勝ち進んだ卒業記念レースの決勝でも、後方に置かれる苦しい展開を克服し、俊敏に追い込んで3着。表彰台に上がる好走を見せた。

 昨年、福岡支部勢として9年ぶりにG1制覇を成し遂げた園田匠は同じ練習グループ。普段からトップレーサーの姿を間近に観察できる環境は、ハイレベルに成長するための最高の促進剤になる。「どんどん強くなって、九州を盛り上げたい」。一流との切磋琢磨(せっさたくま)で、ゆくゆくは九州を代表する選手へと上り詰める。 (10日~小倉)

 ■瀬戸栄作 長崎 強力ツインズ誕生

 強力な双子レーサーが誕生だ。瀬戸栄作(せと・えいさく)は、107期の晋作(しんさく)の双子の弟。昨年デビューの兄は既に11度の優勝。同じDNAを持つ身近なライバルの存在は、最高の刺激材料になる。

 競輪学校には兄と一緒の入学を目指したが、練習中の交通事故でけがを負って断念。それでも持ち前のガッツで克服し、次のチャンスの109期で合格。わずか1年遅れで兄に追い付いた。競輪学校の生活は「最初の3カ月はきつくて、あっという間に過ぎた」。時間も忘れるほど、がむしゃらに自らを追い込んだ。

 二卵性双生児とあって脚質は異なる。スピードタイプの兄に対し、こちらは「長い距離を踏むのが得意」と持久力に自信。そんな個性も、瀬戸ツインズの魅力を高める。

 デビュー戦は、兄はかなわなかった3連勝完全Vが目標。「しっかりと練習をして、狙います」と早速の“晋作超え”を宣言。「早くS級に」という目標へ、デビュー戦から有言実行を目指す。 (3日~高松)

 ■林大悟 福岡 先行勝負貫き通す

 視線の先には常に憧れの父-。孝成さん(59期・引退)の背中を見て育った2世選手の林大悟(はやし・だいご)にとって、競輪選手はごく自然な進路だった。中学時代には新極真空手の九州地区チャンピオン。それでも競輪界入りの意思が揺らぐことはなかった。

 競輪学校では、入学前に父から授けられた「順位は気にせず、とにかく先行してこい」との言葉を忠実に実践。目先の成績を考えれば明らかに不利な戦法だが、将来を見据えてひたすらに逃げた。在校順位は最下位の50位だったが、ホーム数(レースの残り1周の時点で先頭だった回数)は4番目の多さ。心が一切ぶれずに、先行策を貫き通した何よりの証しだ。

 反復することで成長や課題も肌で実感。「仕掛けのタイミングが徐々につかめた」「ペースの緩急がまだまだ」。即戦力の能力を身に付けた。目標は先行型のトップクラス・竹内雄作(岐阜・99期)。デビュー後も自身の信念を貫いて、いち早く近づいてみせる。 (10日~小倉)

 ■池部壮太 大分 無尽蔵のスタミナ

 同じ自転車とはいえ大きな転換だ。池部壮太(いけべ・そうた)は高校時代にロードレースで日本一。そのままプロのロード選手になり、3年間の競技生活を送ったが、収入の魅力はやっぱり競輪選手。バンクの世界への転身を決意した。

 競輪学校の訓練生活は本当につらかったという。「一日一日が長く感じた。仲間がいたから乗り切れた」。訓練中のトーナメント戦は全て予選落ち。思うような成績が残せず、苦しんだ。

 それでも、卒業記念レースでは準決勝に進出。「これまで一度も進めなかったのに…。少しは成長できたかな」とはにかんだ。ロードレースで培った強力な地脚と同様に、苦しい局面でもじわじわと前に進める気持ちの強さも売り物だ。

 デビュー後は「先行策を主体に、自ら動いて勝てる選手になる」のが目標。「スピード面がまだまだ」との課題はあっても、唯一無二のスタミナは間違いなく大きな武器。今度はバンクのプロとして輝きを放つ。 (16日~別府)

 ■林真奈美 福岡 もう一度頂点立つ

 「もう一度、トップに立ちたい」。ボート競技で頂点を極めた林真奈美(はやし・まなみ)が、そんな野望を携えて競輪界に殴り込みをかける。

 高校で始めたボートは13年の競技歴で、実業団デンソー(愛知県)では日本一にもなった。競輪は未知の世界だったが、退社して帰郷後、ガールズケイリンの存在をたまたま知り、「これも何かの縁。スポーツでまた頂点に立ちたい」。一流アスリートの魂に火が付き、自ら門をたたいた。

 競輪学校の成績は4位と上位で、卒業記念レースは決勝進出。十分に立派な結果だが「タイムが思ったほど伸びなかったし、戦法も固まらなかった」とむしろ不満顔。別の世界で頂点を知るからこその向上心の強さだ。

 練習環境は最高。女子の頂点に君臨する小林優香(106期)と、成長が著しい児玉碧衣(108期)は同じホームバンクの姉弟子。彼女たちを乗り越えれば、大目標の「5年以内にガールズグランプリで優勝」も現実になっているはずだ。 (8日~松戸)

 ■野口のぞみ 長崎 粘り強さが持ち味

 長崎支部2人目のガールズ戦士・野口のぞみ(のぐち・のぞみ)は、バレーボールの強豪校出身。九州文化学園高で、全国を2度も制覇した。

 ただ、ひのき舞台はそれが最後。その後は普通の社会人生活を送る中、ふと目にしたガールズケイリン1期生のテレビ番組に刺激を受けた。「もう一度、スポーツの世界で自分の限界にチャレンジしたい」。一念発起し、2度目の受験で合格した。

 そこまでは大したつまずきはなかったが、入学後は苦難の連続。膝を痛めて戦列を離れ、復帰したかと思えば落車。「順調ではなかった」と苦笑い。ただ、幸いだったのは卒業前に大きなけががなかったこと。ラストに向かって、目の前の課題を一つずつ消化できた。

 卒業記念レースは4走して1着こそなかったが、身上の粘り強さは存分に見せた。「周りとは実力差を感じている。動いて戦える選手を目指してレベルアップしたい」。尊敬するイチローに近づけるよう、“のぞみ”はでっかくスーパースターだ。 (2日~静岡)

=2016/06/21付 西日本スポーツ=

PR

レース アクセスランキング

PR

注目のテーマ