頂点へ 再挑戦 秀岳館 春夏連続甲子園(上)「頑張ろう熊本」胸に

西日本新聞

 甲子園球場(兵庫県西宮市)で7日に開幕する第98回全国高校野球選手権大会に、秀岳館が県代表として出場する。準決勝で惜敗した春の選抜大会の悔しさと、熊本地震で十分な練習ができなかったもどかしさをばねに熊本大会を制し、甲子園に再び挑戦する選手たちの成長を追った。

 3月30日に行われた選抜高校野球大会準決勝で、秀岳館は高松商(香川)と延長十一回に及ぶ熱戦を演じ、2-4で惜敗した。十一回裏の攻撃中、頭部に死球を受けて負傷退場した九鬼隆平主将(3年)は、ゲームセットの瞬間をグラウンドで迎えられなかった。

 「今日の負けは主将である自分の責任」。病院に搬送されながら、「夏こそは優勝を」と雪辱を誓った。

 鍛治舎(かじしゃ)巧監督は試合後、選手たちに語った。

 「1日約8時間の練習量はどこにも負けてなかった。残り16時間の日常生活を通じた人間力で負けた」

 監督就任以来、スローガンに掲げている「6S」(整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)、スマイル)のさらなる徹底を呼び掛けた。「あと2勝」で逃した日本一への再挑戦が始まった。ところが、約2週間後の4月14日夜、熊本地震が発生した。

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 八代市では4月14日の前震、16日の本震よりも19日夕方の震度5強の方が「怖く感じた。八代の本震は19日」と語る人は少なくない。その19日の余震の際、監督も選手も学校で練習中だった。「バックネットがぐらぐらと揺れて恐ろしかった。練習どころではなくなった」(鍛治舎監督)

 学校は既に休校措置をとっていたが、4月下旬には再開予定だった。相次ぐ余震のため、休校期間は5月8日まで延びた。九鬼主将ら市外から集まった部員が暮らす寮も安全ではないと判断され、寮生は実家に戻り、自主練習しかできなかった。九鬼主将は「素振りなど1人で体を動かすだけ。野球ができることが当たり前じゃないと痛感した」と振り返る。

 「野球がしたい」。選手全員が同じ気持ちだった。チーム練習が再開されると、これまで以上に必死に打ち込む選手の姿が見られた。

 選手たちは、八代市内の避難所の清掃などボランティアにも参加した。困難な生活を目の当たりにし、野球ができることへの感謝の思いは強くなった。

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 とはいえ、練習不足は否めなかった。公式な大会も延期、中止が相次ぎ、実戦感覚は取り戻せなかった。ぶっつけ本番に近い形で臨んだ夏の熊本大会だったが、春とは見違える「新生秀岳館」の野球が繰り広げられた。

 5試合で70安打、31盗塁。本塁打はなく、選抜大会で全国に印象付けたパワーは一見鳴りを潜めたが、打球の鋭さは増し、単打で出た走者が足で相手の守りをかき乱した。「春と同じでは夏を勝ち上がれない。攻撃の選択肢を増やすことに成功した」(鍛治舎監督)

 控えの半情冬馬選手(2年)、松成亮太朗選手(3年)も活躍。2年生左腕の田浦文丸、川端健斗両投手も好投した。春の敗戦、熊本地震を経て、チーム全体が大きく成長していた。

 熊本大会優勝後、監督も選手も「今年は特別な大会。熊本代表として、地震で苦しむ人たちを元気づける野球をしたい」と繰り返し口にする。ベンチ入りメンバーに熊本出身者はいないが、あの揺れを、県民同様に体験し、ともに日常を取り戻すためにあがいてきた。「頑張ろう熊本」を胸に、日本一に再挑戦する秀岳館野球部は地震を通じて個々の選手が人間的に成長し、真に「熊本のチーム」になろうとしている。

=2016/08/03付 西日本新聞朝刊=

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