和田 トミー・ジョン手術を振り返る 元の自分より強くなろうと思った

西日本スポーツ

 日本ハムとのデッドヒートが一呼吸の月曜日も、和田毅投手(35)が大好きな野球を語る「月曜から野球ばなし」。第6回は「トミー・ジョン手術」についてです。ソフトバンクから海外フリーエージェント権を行使し、オリオールズ移籍早々に手術。マイナーでの実戦復帰まで1年、カブスへ移籍してのメジャー初登板まで2年2カ月…。手術前後の思いと、手術から学んだことを紹介します。

 4年前の2012年、左肘の靱帯(じんたい)再建、通称トミー・ジョン手術を受けました。傷ついた肘の靱帯を切除し、体の一部から摘出した正常な腱(けん)を移植するものです。

 オリオールズに移籍してすぐのこと。現実を受け入れるまではキツかったですね。入団時のメディカルチェックでは何も出なかったのに、キャンプで違和感が出て、故障者リスト入りして開幕。マイナーで調整したけど、4月に靱帯の部分断裂が見つかった。セカンドオピニオンも同じで、5月に手術を受けました。

 何が原因かは分からないままですけど、思えば前年、11年のクライマックスシリーズで、レギュラーシーズン中は全くなかった嫌な感じというか、張りがあった。その後、日本シリーズ第1戦は大丈夫だったのに、第6戦でまた良くない。中6日なのにおかしいなと思いつつ、その時期まで投げたら当然の疲労だろうな、とも思ってたんです。実際、日ごとに良くなって張りも消えた。メディカルチェックもクリアして、大丈夫だな、やっぱり疲労が原因だったんだ、良かった…と思ってたんですが。

 手術と、手術せずに状態を上げていく保存療法があります。どちらにするかは球団と話し合って決めることですが、僕の場合、医師から靱帯の幅の90%が切れていると聞かされて「手術を受けないと無理だな」と自分では思っていました。腹をくくったというか、それしかないと。

 麻酔が切れて、病院のベッドで目が覚めて。リハビリも最初はろくに体を動かすこともできない。「何やってんだろうな」という思いでした。ボールを握れるようになるまで4カ月。キャッチボールも10メートルぐらいからのスタートでした。

 ただ、手術にあたって「元の自分より強い自分になって戻りたい」と思っていた。「強い」というのは体の強さ、それとフォームの見直しです。そういう肘になったということは、そういう投げ方だったということ。同じようなケガをしない投げ方にしなきゃいけないし、よりいい球を投げるにはもっといい投げ方があるかもしれない…と。いろんなことを考えました。目標は手術から丸1年後のメジャー登板。結果的にそれだけの準備期間をとらざるを得ない以上、その時間を無駄にしたくなかった。

■同じ故障防いで

 それまでの自分の映像も見たし、メジャーのいい投手のフォームも見ました。自分の中では手術前の投げ方と、今の投げ方は違います。感覚の話なので、見た目では分からないかもしれません。リハビリは球団の管理のもとで行うので、トレーニングも制限がありました。それでも、体が動かせるようになってからは、用意されたメニュー以外のことも勝手にやりました。投げることは別にして、ランニングとかは、目を盗んでというか。

   ◇    ◇

 同じ手術でも症例はそれぞれ違うはず。だから一概には言えませんが、トミー・ジョン手術の場合、急ぐ意味がない。ゆっくりでちょうどいいぐらいと感じています。ダルビッシュ(レンジャーズ=昨年3月に右肘手術、今年5月にメジャー復帰)もそうだったけど、じっくり治している。僕個人の経験で言えば1年ちょっとで復帰しようとしたから、ちょっと早かった。

 感じが良くなってきたのは、術後1年半ぐらいたってからですね。何か、力が入るようになってきた。1年たって投げ始めたときも、自分の中では「いい感じになってきた」「おっ、これでいけるじゃん」と思うんだけど、それは錯覚。打者相手に投げてみたら、そんなに良くもない。低いレベルなら抑えられても、高いレベルだと打たれる。後々考えたら、1年半ぐらいたってからの方が、いいボールがいってるんです。

 投げ始めはやっぱり、腕が振り切れてない。脳に「怖さ」みたいなものがある。医学的には治ってて、変な感じもなく、腕を振っているつもりでも、無意識でストッパーがかかってしまう。痛みや怖さを体が覚えちゃってるんですね。それを消すのは、本人の感覚。「あ、大丈夫だな」と感じてストッパーが外れるとき、本来の力が出てくる。それは最後の最後、本人にしか分からない。医学的な完治の見極めは、トレーナーさんや医師の仕事になるでしょうけど。

   ◇    ◇

 僕自身、手術を受けた立場ですが、第一にケガをしないことが大事。手術しないに越したことはない。負担の少ないフォームで投げることが大事です。ただ、負担がかかりやすいフォームでも、それも含めて個性とも思っています。だから一番大事なのは故障をした後。二度と同じような故障をしないように、どうするかです。僕の知る限り、米国に比べて、日本では完璧にプログラムを組んでくれるリハビリ施設もなければ、専門的な知識を持つ人も少ない。その辺りの環境がもっと整ってくれば…という思いはあります。

 今でも肘が張ることはある。でも手術したときのような変な引っ掛かりや、何かが挟まってるような感じはありません。ケアも、基本的には術前と変わらず、特別なことは何もしてない。この時期になれば、ケアの量を増やすことはありますけどね。しっかりケアをして、この体で今季、最後まで投げていきます。(福岡ソフトバンク投手)

=2016/09/13付 西日本スポーツ=

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