タカの侍お見事! 決勝T王手!!

西日本スポーツ

8回、決勝犠飛を放ち松田と抱き合って喜ぶ内川(中央) 拡大

8回、決勝犠飛を放ち松田と抱き合って喜ぶ内川(中央)

8回、決勝犠飛を放った内川(左)を出迎える小久保監督(右)

 ベテランが決めた。E組の日本はキューバとの激戦を制し、決勝トーナメント進出に大きく前進した。同点の8回に代打の内川聖一外野手(34)=ソフトバンク=がV犠飛。相手失策で出塁していた松田宣浩内野手(33)=同=が生還を果たした。侍ジャパンは無傷の5連勝。1大会の連勝としては2009年を上回るチーム最多記録として、2次リーグ突破が懸かる15日のイスラエル戦に臨む。

 この時を待っていた。ヘルメットをかぶりながらベンチを出る。ファンも分かっていた。代打のアナウンスが流れる前から、大歓声が全身に降り注いだ。「2安打している(小林)誠司の代打。相当な覚悟を持って行こう」。2度、3度とスイングを繰り返し、内川は勝負の打席に向かった。

 同点で迎えた8回1死一、三塁。まさに勝負の潮目で、出番がきた。「何でもいいので1点という思いだった」。打撃の内容は問わない。チームを勝利に導く1点が欲しい。球界屈指の打撃職人は、泥くさく、マウンドのラエラと対峙(たいじ)した。

 1ボール2ストライクからの4球目だった。見逃せばボールかという外角スライダーに食らい付き、右翼線へ運んだ。値千金の決勝犠飛。「欲を言えばヒットで返したかった」。どこまでも貪欲な姿勢は日の丸を背負っても変わらない。小久保監督は「普段はチームで4番を打っている選手が、代打の1番手というところで文句一つ言わずやっている姿に、チームメートも勇気づけられたと思う」と賛辞を贈った。

 忘れもしない4年前の前回大会。プエルトリコとの準決勝で自身の走塁ミスが響き、日本は3連覇を逃した。「過去2大会、連覇を果たされた選手がいらっしゃる。それを自分のプレーで終わらせてしまった…」。試合後は唇を震わせ、人目をはばからず涙した。

 第2回大会で歓喜に浸り、第3回大会で失意に沈んだ。その後どうやってチーム宿舎に戻り、帰国便に乗り込んだかを覚えていない。それほどまでに敗戦の責任を背負い込んだ。「このまま飛行機が落ちれば日本に戻らなくて済むのに…」。たった一つ残る記憶は、地獄を味わった者にしか分からない苦しみだった。

 その苦しみから、完全に解放されたわけではない。「打席に行く前、吐き気を催す。あの時を思い出すんよね」。4年前の悪夢がフラッシュバックのように、今大会で打席の内川を襲う。それに打ち勝つには、与えられた場所で結果を残し続けるしかない。自分との戦いはまだ続いている。

 そして、もう一つ。果たさなければならない約束事がある。ホークスの先輩で先代主将でもある小久保監督を、世界一に導くことだ。今大会に向け、代表入りを告げられたのは昨秋のこと。28人のメンバー中、一番の“内定者”だった。固い絆で結ばれた指揮官は試合後、言った。「得失点を考えず、勝てばロスに行けますので、勝ちに行きます」。きょう15日のイスラエル戦に勝ち、無条件での1位突破を果たしてみせる。 (石田泰隆)

=2017/03/15付 西日本スポーツ=