侍・小久保監督「負けた全責任は俺にある。胸を張って帰国しよう」

西日本スポーツ

 ホームも世界一も遠かった。2大会ぶりの優勝を目指した日本は米国に1-2で敗れ、決勝に進むことができなかった。メジャー投手の動くボールに対応できず強力打線がわずか4安打と沈黙。雨のグラウンドで守備も乱れ、前回大会に続き準決勝で力尽きた。世界一奪還の悲願を果たせず、今大会で契約の切れる小久保裕紀監督(45)は退任の意向を表明した。侍ジャパンは23日に帰国する。

 ■「これで契約満了」

 その場を動けなかった。両腕を組んだままベンチの最前列に立ち尽くす。視線の先では、勝利したメジャー軍団が喜びを分かち合っている。5秒…10秒…。現実を受け入れたくなかったのだろう。小久保監督はベンチに腰を下ろしても1分以上、グラウンドを見つめたままだった。

 「準決勝の一発勝負で負けたけど、選手はここまで本当によくやってくれた」

 侍ジャパンが武器としてきた守備の乱れが勝負を分けた。4回に奪われた先取点は、二塁で再三の好プレーを見せてきた菊池の失策が起点。8回の決勝点も1死二、三塁で三ゴロをさばききれなかった松田のプレーからだ。チームにとっては間違いなく痛恨のミス。しかし、小久保監督は選手の奮闘をたたえた。「2点はミスで入ったが、これまでチームを救ってきたのも彼らのプレー。責めることはできない」。日本のトッププレーヤーが集まる集団。選手へのリスペクトを最後の最後まで貫いた。

 2013年秋に監督に就任した。師と仰ぐソフトバンクの王貞治球団会長から「まだ若いんだから、失敗を恐れずに思い切りやれ」と背中を押され、大役を引き受けた。その間、小久保監督が選手に言い続けてきたことは「各世代の侍ジャパンの模範になること」だった。

 グラウンドでの唾吐き禁止、ベンチ内での着帽。相手に敬意を持ち戦う心。これらは代表集合のたびに必ずミーティングで伝えてきたが、今大会では必要なかった。「もう、俺の考えは行きわたった」。自分の思いを選手に浸透させチームの一体感を出す。侍ジャパンのあるべき姿を選手たちに感じ取っていた。

 侍ジャパンのトップチームは憧れを持たれる存在であってほしい-。小久保監督の思いはユニホームのデザインにも加えられた。昨秋の強化試合から着用する“戦闘服”には、両腕と首回りに金の刺しゅうが施された。両腕は過去2度のWBC制覇を表し、首回りは3度目の世界一奪取を祈願したもの。さらに両腕の内側には日の丸をイメージさせる赤いライン。1点が届かず無念の準決勝敗退となったが、その思いは次の世代へと引き継がれる。

 試合後に行われた小久保ジャパン最後のミーティング。指揮官は目を真っ赤に腫らしながら言った。「負けた全責任は俺にある。おまえたちはよくやった。胸を張って帰国しよう」。現役時代、自身が登るとチームが2度とも優勝した験を担ぎ、昨秋に西日本最高峰とされる愛媛県の石鎚山に登った。世界一への思いは誰よりも強かった。

 今大会を最後に監督を退任する。「この大会に向けて引き受けさせていただいた。これで契約は満了です。彼ら(選手)はリスクを顧みず球界を引っ張っていくという使命感の中で戦ってくれた。しっかり敬意を表したい」。悲願には届かなかった。しかし、小久保監督が思い描いた道は、日本の野球を明るい未来へと導くに違いない。 (石田泰隆)

=2017/03/23付 西日本スポーツ=

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