ソフトB達川ヘッド、広島現役時代の“4月事件” 月間4割で首位打者、その後…

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練習を見守る達川ヘッドコーチ 拡大

練習を見守る達川ヘッドコーチ

貯金2で終えた4月を「上出来」と評価した達川ヘッドコーチ

 【達川ヘッドの今昔物語】

 今季からスタートした達川光男ヘッドコーチ(61)のコラム「今昔物語」-。独特の話術で球界の今と昔を紡ぐ語り部が、今回も痛快に論じます。好評を博した初回に続く第2回は、監督経験も生かした「大局観」を披露します。図らずも4月はチームにとって我慢の日々となりました。自身が広島で現役だった1986年に体験した「4月事件」と、その後の足跡から導くホークス2017年の展望とは-。

■ええんじゃけど 「いいね」甲斐が多い

 西スポ読者の皆さん、どうも達川です。第1回が好評じゃなかったら、もうやらんつもりじゃったんじゃけど。記者さんが「好評でした、大好評でした」言うもんじゃから、今回も引き受けさせてもろうたんじゃが。インターネットを見せてもろうたら「いいね!」が、145件しかないじゃないか。甲斐の記事の方が「いいね!」が多かったわ。まあ、選手が活躍してファンの方にいっぱい記事を読んでもらうことはええことじゃから、ええんじゃけど。

 ということで、早いもので4月が終わってもう5月。今の成績は、ホークスファンの方にとっては、少し物足りないと思われとるかもしれんけど、まったく問題ないよ。言い訳にはしたくないけど、4月は移動ゲームも多かった中で、選手はよう頑張った。これから、どんどんええ方向に向かうと思うとる。最後に1厘差でもいいから、一番上におればええんじゃから。

 ワシはことわざが好きじゃけえ、今回から毎回ことわざを軸にしゃべらせてもらおうと思うとる。今回は「禍福は糾(あざな)える縄の如(ごと)し」という言葉。災いと幸福は表裏一体で、より合わせた縄のように、代わる代わるやってくるということ。野球も人生も同じ。成功も失敗も縄のように表裏をなして、目まぐるしく変化するものだということよ。

 あれは、今から31年前…。1986年の4月のことじゃった。生涯打率2割4分6厘のこのワシが、何を狂ったのか知らないけど、大変なことを起こしたんよ。結論から言うと、4割1分3厘の打率で月間首位打者。もう、開幕から打ちまくった。振ればヒット、振ればヒットよ。自分でも「これ、どうなるんかなぁ」思うて。あのイチローでもなし得ていない4割を、月間とはいえこのワシが打ったんじゃから。そりゃもう大事件よ。当時の主軸だった衣笠祥雄さんや山本浩二さんからも「おまえ、どうやって打つんや、教えてくれぇや」言われてな。「勘弁してくださいよ」と言いながら、自分でも自分の成績が信じられなくて毎日「あれぇー?」いう感じよ。

 川上哲治さんが「ボールが止まって見えた」とおっしゃってたけど、ワシの場合は「ボールが動いて見えた」んよ。えっ、そのままじゃないかって? そりゃあボールは動くもんじゃけど。あの時のワシは、ピッチャーが投げる球が右でも左でも下でも、どっちにどう曲がるんか、本当によく見えたんよ。でも、開幕前のオープン戦の成績は、20打数1安打。開幕が迫る中で「こりゃまずいな…」と思いよったんじゃけど、きっかけいうのがあったんよ。

■唯一の好機逃す 甲乙つけがたい次点

 若手時代から首脳陣の方によう言われよったのは、気持ちの切り替え。技術とかは、すぐにパっと良くなることはそうそうないが「気持ちは1秒で変われる」と。そう教えられとった。で、開幕前夜のナイター練習のシート打撃。今振り返れば、気持ちを変えてみようと思ったんやろうな。それまでよりスタンスを少しだけ狭くして、バットを少し内側から出るようにしたんよ。そしたら軸足に体重が乗るようになって「これだっ!」と思って。真っすぐも変化球も簡単に打てて「今まで何じゃったんか、と」。もちろん、打てなくて開幕に向けて必死に練習をしてたのもあって、自然にバットを振れるようになったんじゃろうけど。

 ただ、結局4月の月間MVPは、打率3割7分8厘で8本塁打の山本浩二さんが獲得したんよ。ワシもそりゃあ打ちまくったんやけど、万年2割の男と球界を代表する打者じゃからな…。まあそれは世の常でしょうがないと納得したけどな。後日、月間MVPの表彰式にコミッショナーが球場へ来られた時に「達ちゃん、本当に残念やったな。今回はかなりの接戦やったぞ。もう、甲乙つけがたい次点やった。まあ、でもあんた、まだチャンスあるんやから頑張れ」と激励してくれたよ。それから、まあ二度と(月間MVPの)候補にもなれんかったんじゃけど。しかし、「甲乙つけがたい次点」て、おもしろい表現じゃなあと思ったものよ(笑)。

■有頂天で急降下 5月打率は1割台に

 そんなに打ちまくったわけじゃけど、ゴールデンウイークに入るくらいから一気に打率は下がった。5月は1割6分4厘。シーズンが終わってみれば、キャリアハイの2割7分4厘じゃったけど。まあ何が言いたいかと言うと、ワシみたいに有頂天になっとると、調子が良くても打てなくなるし、逆に今が不調だからといって落ち込むことはない。今年は開幕からなかなか投打のバランスがかみ合わなかった中で、4月を終えて貯金2。長いシーズンを考えれば上出来だと思うよ。5月はぜひ期待してください。

 で、次回のコラムができるかどうかも、今回同様に読者の皆さんに好評を頂けるかどうか次第じゃけどな。まあ、ワシが逃げんように記者さんが「次回の予告をしてください」言うもんじゃから、とりあえず予告だけはしとこうかの。次は6月じゃから、梅雨時期にまつわる思い出話を語らせてもらおうと思うとる。ある年の6月にワシの人生最大とも言うべきピンチが訪れるんじゃけど。意外な動物の姿がワシを救ってくれたんよ。それは…。 (福岡ソフトバンクヘッドコーチ)

 ◆達川光男(たつかわ・みつお)1955年7月13日生まれの61歳。広島市出身。広島商高、東洋大からドラフト4位で78年に広島入団。攻撃的なリードと打者に話し掛けるささやき戦術で正捕手を務めた。現役通算成績は1334試合出場で打率2割4分6厘、51本塁打、358打点。ベストナイン、ゴールデングラブ賞を各3度受賞。92年限りで現役引退後は、95年にダイエーでバッテリーコーチ。98年に2軍監督で広島復帰し、99、2000年監督。03年は阪神、14、15年は中日でコーチを務めた。野球解説者でも活躍。右投げ右打ち。

=2017/05/02付 西日本スポーツ=

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