ソフトB前監督・秋山氏が語る内川打撃の神髄 主将にも4番にもしなかった理由

西日本スポーツ

 福岡ソフトバンク前監督で本紙評論家の秋山幸二氏(56)が9日、通算2000安打を達成した内川聖一内野手(35)に賛辞を贈った。監督時代の2011年にフリーエージェント(FA)で獲得した選手でもあり、他球団からの移籍、キャプテンの肩書、背番号「1」…など共通項も多い2人。新境地を切り開いたホークスの4番打者を祝福するとともに、現代の右打者で最高峰といわれるヒットメーカーの打撃を解説。多種多様な投手との勝負を制してきたキーワードは「究極のリラックス」だった。

 確固たる自分のスタイルを持った上で、人に合わせられるプレーヤーは強い。内川はその典型だ。投手と打者の勝負は「間の勝負」と言い換えてもいい。投球フォーム、球の角度、球種、左腕と右腕、上手、横手、下手…。打者がこの世界で長く生きていくためには、多種多様な投手にいかに対応できるか。その一点に尽きる。極端な話、1人の投手と1年間ずっと対戦し続ければ、打率5割近くは打てるだろう。投手のタイプは千差万別なので、総じて3割ぐらいに落ち着く。対応力にたけた内川だからこそ、毎年コンスタントに打ち続けてきた。

 右方向を狙っていても肩が投手の方向、センターに向かって真っすぐ入っていくところなど素晴らしい。ボールがアウトコースに来れば、簡単に捉えられるし、逆にインコースに投げられても腰を回転させてレフトに持っていける。これが内川のすごさだ。

 こんなタイプはあまり見たことがない。高校の時に本質というか、土台が出来上がったのだろう。ファンは技術でヒットを打っている印象を持っているかもしれない。それだけではなく、彼はきっと目を閉じても投手の球の軌道や、捉える自分の姿も連想できているはずだ。ロッテ井口監督の現役時代にも通じる細かな観察眼や豊かなイメージ力は、捕手との読み合いを制するのに欠かせない要素。情報収集能力も高いのだろう。

 監督時代、周囲から「内川になぜ主将をさせなかったのか」とよく聞かれた。キャプテンはチームをまとめるのが一番の役割。若手をもり立てることも含めて、結局他人のことにも心を砕かなければいけない。チームと個人。その両方をやろうとして、自分のスタイルを崩されるのが嫌だった。だから、私の時は内川や松田は自分に徹して、技術を高めてもらった方がチームにもプラスになると考えた。ただ、強いホークスの主将をやるのは彼にとって大きな財産になる。

 ホークスに加入した時、彼に「打撃スタイルを変える必要はない。内川聖一の打撃を必要としている」と伝えた。私自身の失敗があったからだ。私はチームも球場も変わって試行錯誤した。本塁打を求めて腰を痛めたことから、打率を求めて3割を打った年も同じで、物足りなさが残った。内川を3番に置いたのは「4番」を意識させたくなかったから。当時の彼にとって「4番」はプラスにならないと思った。内川は追い込まれたら、試合展開によっては走者を進めるチームバッティングもいとわない。私の立場からすれば「ウッチーさん、どうぞ打ってください」なんだけれど、自己犠牲の気持ちが強い。ヒットで走者をかえしてくれた方が1点を取れる確率が高いし、彼は3度に1度は必ず打ってくれる。そんな話もした。

 内川は、キングのタイトルを取れるぐらい本塁打を多く打って、なおかつ高い打率も残すタイプが4番にふさわしいとの考えを持っていたようだ。でも、ホークスに来て「チームを勝たせる」という新しい4番像をつくりあげた。

 今季は序盤から思うような結果が出ていなかった。一つだけ気になるのは、初球から2ストライク後のバッティングをしているように映ることだ。恐らく原因は心理的な部分が大きいのだろう。調子が上がらないチーム状況もあって「主将で4番」の内川らしい責任感がそうさせているのではないか。

 追い込まれるまでは思い切り自分のスイングをするのが、彼本来のスタイル。2月のキャンプで話をしたけれど、彼にとって2000安打はあくまでも通過点。自分自身を駆り立てる次の目標をつくった方がいい。3000安打という数字もその一つだろう。ここ一番の好機に確実にヒットを打てる4番打者として、これからもホークスを勝利に導く一本を積み重ねていってほしい。

(本紙評論家)


=2018/05/10付 西日本スポーツ=

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