秋山幸二氏、今語る西武時代「バント拒否して交代」事件/ホークスOBトーク4
ソフトバンクは6月2日のDeNA2回戦(ヤフオクドーム)を、球団創設80周年企画「レジェンドデー」の第3回として開催した。ゲストとして招かれたダイエーOB、ソフトバンク前監督の秋山幸二氏(56)が試合前、球場に隣接するヒルトン福岡シーホークでのトークショーに登場。ファン約210人を前に語った内容をお届けする。全4回の第4回。
-ホークスファンにたくさんの感動を与えてくれた秋山氏。せっかくなので質問を受け付けます。
(Q.現役時代の忘れられないプレー、試合は)
そうですね、まあ思い出はあるんですけど、多分、僕が一番変わったのは、やはり、あの「バック宙ホーム」です。あれをやって、こう…何つうかな、自覚が芽生えたって言うんですか。
それまでは、こういう選手になりたいとかって(思いは)ありながらやってたんだけど、あれをやったばっかりに、周りの人の目が、見方がね。マスコミも、ファンの皆さん方もそうだったけど、そのこう、注目度って言うんですか? 視線と。かなり自分の中で意識が変わったっていうのがありますね。だからあれが一番でしょうかね。やっぱりね。
-今でも「珍プレー好プレー」で必ず取り上げられます
でもね、そんなにやってないのにね。
-何回やったんですか
5回です。5回。サヨナラホームランで一回、やったんですよ。何かサヨナラホームランでやるっていう話で、結局日本シリーズでそういう(西武時代の1986年、広島との日本シリーズ第8戦で、6回に同点2ランを放った後に披露)。
僕はね、チームをこう、盛り上げようとしたんですよ。1分け3敗で、もう日本シリーズだめだと。もう負けって。それからもう、みんな気楽にやってたら、あれよあれよという間にね、3勝3敗1分けまでいったんですよ。
そして最終第8戦になったら、もうね、ベンチにいたら、えらい(チームが)緊張してるでんすよ。東尾さんとか、みんなね、先輩もいたんですけど。もうベンチの中ね、シーン…ってしてる。で、僕まだ若かったんで。これ、ホームラン打ってバック宙したら盛り上がるかなって。それでやったんですよ。チームを盛り上げようと思って。それが一番のきっかけでしたもんね。
-結果、日本一になった。
そう。
-会場に生でバック宙ホームインを見られた方は?
(挙手したファンがおり)ああ、あるんですか。日本シリーズで? ああ、その第8戦のとき? 生で…すごいですね。へえ…。
(Q.西武時代に「送りバントを拒否して羽生田と交代」という話があった。ホークス移籍後は結構、バントをしていたが、どういう心境の変化があったのか)
ああ。ありましたね。新聞1面になりましたね。「秋山 バント拒否」というね(笑)。あった。いいですね。素晴らしい。すごく昔のことを覚えてもらってて。
ええと、新聞1面だからね。「秋山バント拒否」っつって。「おれ拒否してないんだけどなぁ」と思いながらね。あん時はね、そういう展開になった中で、8回ぐらいだったかな。後半ですよ。もう、当然、ああ、バントもあり得るなっていう場面だったんですよ。
で、僕もネクストサークルでこうやって(準備)やってました。で、ああ、バントもあるかもなって思いながら立ってました。そしたらね、黒江さんがヒョコヒョコっと来たんですよ。当時、森監督、黒江ヘッドコーチですよ。
「秋山、バント自信あるか」って言うから、「ないです」って(笑)。「バントは自信ないです」って言って。「そうかぁ」って、トコトコトコって帰っていって、で、交代って。そしたら次の日「秋山バント拒否」。
-自信がないと言っただけだった
いや自信はねー、ないじゃない? そんなにバント練習しないから。でも、僕から言わせれば、それでもサイン出せばいいんですよ。サインを。で、もう、僕は一生懸命、多分、バントをすると思います。成功するか、失敗するかは分かんないけど。僕はそう思ったんですけどね。
だって「自信あるか」って言ったら、そりゃバントは自信ないですもんね。でもホークス来て、バント、もう結構やってますけども、別にそれは野球の中で勉強していかなきゃいけないとこなので。チームが勝つためにっていうのがね。特にやっぱりあのー、王監督の時にはね、やっぱり勝たなきゃいけないっていうのをね、選手に言われてましたんで、それはもう全然、問題ないです。バントうまいんですけどね。バント、だいぶ練習しましたから。
-野球で苦手なことは
うーん…そうですね。強いて言えば…うーん、ヒットを打つ? ハハハハハ。まあ、そうでもないなぁ。何ですかね。あんまり苦手っていうのはないですね。
(Q.ダイエーが初優勝した99年当時、対戦した中ですごいと感じた選手は?)
ピッチャーですか? 野手も含めて? うーん…。あのね、やっぱり選手時代はね。このピッチャー…昔ね、カモと苦手とか何か、そういうの聞かれること、あったんですよ。でもね、好きなピッチャーは言うけど、嫌いなピッチャーは口に出して、自分でね、言わないようにしてる。
何でかって言うと、自分で意識しちゃうから。メンタルってやっぱり、自分で意識して、いい方にいけばいいけどね。逆に、変に意識すると、自分であー…苦手になってるのかって思っちゃうんで。なるべくそういうふうには思わなかった。
ただ、いいピッチャーはたくさんいました。野茂(英雄)もいいピッチャーだったし。いっぱいいますよ。だって星野(伸之)君なんかね、120…真っすぐなんか130キロも出なかったですね。120何キロとか。で、カーブが100キロぐらいでね、ビューンと。あとフォーク。3種類だけですよ。でもそれでも百何十勝しますからね。球が速いからいいピッチャー、ではなくてね、技術があって、うまいなっていうピッチャーがいます。
野手に関しては、僕の中ではやっぱり、右は落合(博満)さん。で、左はね、ランディ・バース。これは僕、センター守ってたんで。ピッチャーの真後ろから見てんですよ。当時の西武のピッチャーが投げてます。もうほんと、いいピッチャーが。ところが、見逃し方でも捉え方でもね、全部タイミングが合ってるんですよ。いろんなピッチャーが投げてくるんだけど、それに対していつもこう、タイミングが合って、見逃したりとかしてね、そういうバッターはこの2人だけ。
バースは日本シリーズしか会ってませんけども。うん。うん。ほんと、見てて、アッ、これ全部タイミング合ってんな、打たれんじゃねえかなっていう気持ちになるんですよ。守ってて。
そう感じたのはこの2人。すごかったですね。はい。
-同じ時代だったら大谷と対戦してみたいですか?
分かんないねえ(笑)。
-サファテはどうですか?
サファテ、怖い。ハハハハハ。どこ投げてくるか分かんない(笑)。まあ、まあ、速いピッチャー見てみたい気持ちはありますね。
いいバッターってね、目ぇつぶった瞬間にもう投球フォームが全部、分かる。打席に立って、1回見たときに、ああ真っすぐのスピードは、こういう速さで、スライダーのキレとか、カーブの抜け方とか、全部イメージできるんですよ。その中で、どれを抜こう(捨てよう)、どれが次に来るのかな? っていうので、駆け引きしていくんですけど。
今まで対戦したピッチャーの画像見たら、もう、すぐ分かりますね。投げ方とか、投球のリズムとか、ああ、真っすぐはこれぐらいのスピードで、ああ、変化球はこれぐらいの曲がりでいってたなとかは、記憶に残ってますね。
-そろそろお時間となりました。
今日は優勝…あ、優勝じゃなくて勝つこと(笑)。優勝する前に、まず勝つことをね前提に、はい、皆さん一生懸命、応援してください。ありがとうございました。
(おわり)
=2018/06/05 西日本スポーツ=