CS突破の陰で…亡き後輩の言葉に救われた/達川ヘッドコラム

西日本スポーツ

 巧みな語り口が名物の達川光男ヘッドコーチ(63)のコラム「今昔物語」の今季第3弾をお届けします。今回は27日に開幕する広島との日本シリーズについて。現役時代、そして監督時代とプロ野球人生の大半を過ごした古巣との頂上決戦を前に、知り尽くしたカープの強さ、クライマックスシリーズ(CS)突破の陰で、同ヘッドを支えた今は亡き後輩の言葉など、思いの丈を語ってもらいました。

 西スポ読者の皆さん、どうも達川です。シーズンでは2位に終わり、悔しい思いをしましたが、CSでは何とか日本ハム、西武とシーズンで負け越したチーム相手に意地を見せられたんじゃないかと思っております。頑張った選手を褒めてやってください!

 それにしても、正直、西武相手にあんなに打ち勝てるとは思ってもおらんかった。選手を信じてなかったわけじゃないんよ。9月に6試合あった直接対決を思い返してほしい。ここで勝てば逆転優勝も見えてくるといった戦いで、1勝5敗じゃ。しかも、圧倒的な力の差を見せつけられた。

 だから、ファイナルステージが始まる前のわしは弱気じゃったんよ。どう戦えば、あの西武に勝てるんか。考えれば考えるほど不安が募っていってのぉ。

 そんな時にテレビで、巨人とのCSに備える広島のニュースをやっとったんじゃ。そこに映っとったのが初戦に先発する大瀬良でのお。彼のユニホーム姿を見て、われに返ったんじゃ。

 背番号14。炎のストッパー、津田恒実が背負った番号じゃ。あえて説明する必要もなかろう。「弱気は最大の敵」。あいつが残した言葉を思い出してのぉ。戦う前から、シーズン2位で終わったわしらが弱気になってどうすんじゃと。優勝した西武の胸を借りるつもりで戦わんとあかんと思わせてくれてのぉ。それで腹が決まったんじゃ。

 まあ、わしの力で西武に勝ったわけじゃないが、選手が底力を見せてくれたおかげで日本シリーズまで勝ち上がれた。そこはもう、本当に感謝しかないよ。

 だけども、やっぱりあの辻監督の涙を忘れちゃいかんよ。彼とは中日で2年、コーチとして一緒にやったこともあるんじゃが、とにかく隙がなく、妥協しない男でのぉ。年は三つ下なんじゃが、尊敬できる男よ。

 野球も当然、よく知っておる。きっと、シーズン同様、ホークスには勝てるという自信があったんじゃろ。それだけの強さを誇っておった。だから、悔しさをこらえきれず、衆人環視で涙したんじゃろ。その思いもわれわれはしっかり受け止めて、パ・リーグの代表として戦わせてもらうよ。

■どん底からはい上がった集団、簡単には倒せない

 さて、相手の広島じゃが、ホークスと日本シリーズを戦うのは初めてらしい。わしも広島と戦う日本シリーズは初めてじゃ。こんな日が来るとはのぉ。ただ、本音を言えばやっと巡ってきたかという感じかのぉ。

 昨年はウチがリーグ制覇して日本シリーズに出たけど、セ・リーグで優勝した広島がCSで敗退した。今年はウチが優勝を逃したけど、CSを勝ち上がることができた。一方の広島はリーグ3連覇を達成しての日本シリーズ。思っていた形とは違うが、楽しみじゃ。

 広島はプロ入りした22歳の時から40年近く見てきたが、もう一緒のユニホームを着て戦ったのは新井しかおらん。あいつの座右の銘は「感謝」じゃが、その思いをチーム全員が持って野球に取り組んでいる。それが広島というチームじゃ。

 今年でリーグ3連覇じゃが、その前年(2015年)は勝てばAクラスという試合で敗れて4位に終わっとる。その試合の負け投手が大瀬良じゃ。ものすごい罵声が飛んでいたよ。そこで味わった悔しさが、今年の最多勝にもつながっているんじゃないかのぉ。

 そういうどん底を知り、逆境からはい上がった集団だから、簡単には倒せないと思う。加えて、あの最後まで絶対に諦めない姿勢。全力疾走。凡事徹底できるのが広島というチーム。間違いなく、手ごわいよ。

 チームの団結力もすごい。CSファイナルSを勝ち抜いた試合で、菊池が今季限りで引退する新井に向けて「お兄ちゃんのために」と言えば、新井は「家族一丸で」とチームの結束力をうかがわせた。ああいう相手の一体感は恐怖でしかないよ。

 でも、頂点を目指す思いはウチの選手も負けていない。個々人の力もウチが上と思っておる。がっぷり四つの戦いになるんじゃないかのぉ。柳田も地元広島で頂上決戦を戦えるとあって、気持ちも入っとるじゃろ。

 わしの広島の友人も「あんたは自分にボールが当たった、当たってないでファンを喜ばせとったけど、ギータは空振りだけでファンを喜ばせてくれる。広島の誇りじゃ」って嫌みを言われる。そんな嫌みを吹き飛ばす、豪快な一発をかっ飛ばしてほしいのぉ。

 とにかく、今年最後のプロ野球の試合じゃ。ファンの方に喜んでもらえるような、手に汗握るような、最高の試合をお届けしたい。

=2018/10/24付 西日本スポーツ=

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