育成出身初のMVP 広島封じた「甲斐キャノン」の秘密は左足に

西日本スポーツ

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MVPに選ばれ、表彰される甲斐(右)

1回1死一塁、広島打者・丸の時、一走・田中の二盗を刺す甲斐

 ◆SMBC日本シリーズ2018:第6戦 広島0-2ソフトバンク(3日・マツダスタジアム)

 甲斐にとって、悲喜入り交じる記憶のマツダスタジアムで最高の歓喜に酔いしれた。育成ドラフト出身者で初の日本シリーズMVP。捕手では2009年の巨人阿部、パでは1962年の東映種茂以来の快挙に「びっくりした。投手の方が一生懸命クイックやけん制を頑張ってくれたおかげ。(広島の機動力には)不安もあったがこういう形で終われてよかった」と笑顔を見せた。

 この日も序盤にコイの戦意をそいだ。初回1死一塁。丸に対する2球目に二盗を試みた田中を刺し、2回2死一、三塁では一走の安部を刺した。

 このシリーズでは一度も盗塁を許さなかった。開幕戦から4試合連続(4者)で阻止。4者連続は1958年の巨人藤尾以来、60年ぶりの快挙で、さらに第6戦の2度で6者連続として新記録も樹立した。シリーズ計6個目も52年巨人広田に並ぶタイ記録となった。

 記録ラッシュに彩られ、今季12球団トップの盗塁阻止率4割4分7厘の「甲斐キャノン」は一気に全国区となった。注目を浴びるのも当然だ。セ・リーグの1位95盗塁を記録した広島の武器である機動力を完封。投手陣の好投にもつながっており、第4戦で白星を挙げた東浜は「助かるなんてもんじゃない。走者に対する意識を、ほぼ打者にむけられる」と証言する。

 強肩ぶりが注目されるが、遠投は115メートルとプロの世界では決して突出したものではなく、身長も170センチと小柄。甲斐は「肩は強くない。動作が速いんだと思う」と話す。吉鶴バッテリーコーチも「足が速いんだ。ステップワーク。だから捕って素早く投げられる。あと制球の良さ。いかに正確に早く投げられるかが勝負だから」と説明した。

 2秒を切れば速いとされる二塁送球で最速1秒7台をマークする。鍵は左足。一走がスタートすると捕球する直前に左足を前に出す。この一歩早い始動が「時短」となり驚異的な送球を実現させた。また同コーチが「クイックタイムは1秒25以内と投手とも申し合わせてある」と言うように、投手陣の協力もあった。

 コントロール面では「遠くに投げる力はいらない。二塁へより強い球を投げる」ことを常に意識して、キャッチボールでも低く強く投げる。育成ドラフト6位で入団して「この世界で生き残るために」と、磨きをかけた技術が大舞台で一気に日の目を見た。

 ■達川ヘッドコーチと出会い「人生が変わった」

 「広島」には不思議と縁がある。2015年のオープン戦では自身の捕逸でサヨナラ負けし、目を赤くした。広島出身で17年から加入した元捕手の達川ヘッドコーチ(HC)との出会いは「人生が変わった」と言う大きな転機となった。

 レギュラーをつかみつつあった昨季の交流戦。「失敗したら2軍に落ちると思わなくていい。思い切りやれ」との達川HCの言葉が励みとなった。優勝を決めた広島で、甲斐は恩師に「優勝できました」と握手を求めた。すると「こっち向くな、こっち向くな」と言う達川HCの目には光るものがあり、自身も目頭を熱くした。思い出深い広島で、チームの原動力としてシリーズの連覇を決めた。 (山田孝人)

=2018/11/04付 西日本スポーツ=

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