続投ならずも高木監督が感謝する理由 長崎で6年…故郷愛とJ1復帰への提言

西日本スポーツ

退任会見に臨んだ長崎・高木監督 拡大

退任会見に臨んだ長崎・高木監督

J1昇格を決め胴上げされる高木監督=17年11月11日 就任1年目のホーム開幕戦を白星で飾れず渋い表情で引き揚げる高木監督(左)=13年3月10日 J1残留を懸けた鳥栖との九州ダービーで、試合中に険しい表情を見せる高木監督=18年11月4日

 今季限りでの退任が決まったJ1長崎の高木琢也監督(51)が20日、長崎県諫早市のクラブハウスで会見した。17日に1年でのJ2降格が決定したことを受けてクラブに契約満了を通告されたが、高木監督は感謝の思いを強調。サッカー界では長期といえる6年間の指揮生活を振り返りながら「アジアの大砲」が約1時間、熱いメッセージを送り続けた。

 長崎はJ1ライセンスを持たないJ2町田が2位以内に入ればJ1残留の可能性が残った。しかし17日のJ2最終節で引き分けた町田は4位で終了。長崎のクラブハウスでスタッフと一緒に動画配信サイトで観戦していた高木監督は「気持ちが重くなるというか…。そういう気持ちは出ないだろうと思っていたけど、かなり残念だった」と落ち込んだ。

 その後、強化スタッフを通じて正式に契約満了の通告を受けた。「この結果でなかなか自分の口からやりたいとは言いづらく、自分の責任なのは分かっている。自然の流れかな。選手には常に変化、進化を求めてきた。クラブも進化しないといけない」と素直に受け入れたという。さらに「順位が近い柏や鳥栖が監督を交代する中で、最後まで任せていただいたことに感謝したい。感謝しかない」と繰り返した。

 高木監督にとってJリーグのクラブを指揮したのは長崎が4クラブ目だった。その中でも6年は最長の指揮期間。思い入れのある試合を問われると、3試合を挙げた。

(1)17年11月11日 ○3-1讃岐

 「やはりJ1昇格を決めた試合は劇的だった。ホーム最終戦で(JFL時代の12年から在籍する)前田がゴールを決めて勝った」。試合は午後7時すぎに開始。昼間に試合を終えた名古屋と福岡は勝利を逃したため、勝てば昇格という状況だった。「実は自分自身は全く他チームの状況を知らなかった。あと5分ぐらいでミーティングをしようとしたときに、友達からLINEが来て、初めて知った」と知られざるエピソードも披露した。

(2)13年3月10日 ●1‐3G大阪

 就任1年目、クラブがJ2に参入した年のホーム開幕戦には1万8000人超が来場。前半に3失点も後半に1点を取り返した。「ああいう(強い)チームとやらなくちゃいけないと思い知らされ、腹をくくれた。後半は選手たちの勇敢さにも心を打たれた。下がらずプレッシャーをかけ、試合を支配することができたから。そこからチャレンジが始まった」。参入1年目でいきなりJ1昇格プレーオフに進出し、周囲の低評価を覆した。

(3)18年11月4日 ●0‐1鳥栖

 残留を懸けたアウェーでの大一番。互いの意地がぶつかり合った試合には2万2000人超が来場し、九州サッカー史に残るダービーの一つとなった。「試合を見ながら、コーチと『こういう雰囲気ってすごいよな』と。僕はああいう雰囲気で一度も試合したことがない。いい思い出になりました」。試合当日の朝6時にスタジアム周辺をジョギングした際、並んでいる長崎のファンの姿にも胸を打たれたという。

 長崎県南島原市出身の高木監督にとって、故郷のクラブを指揮して悲願のJ1昇格も果たしたこの6年は、サッカー文化が根付いてきたことを実感する日々でもあった。「(長崎市の)稲佐山のライトアップが(チームカラーの)ブルーになるのが僕の夢だった。試合前日にいつも眺めていた。サッカーのにおいがする街になってきた」。区切りをつけた今、クラブを離れることになるが「これからは私自身もファンの一人として見守っていきたい。このチームを応援してくださる人たちと一緒に支えていけると感じられる。いつか一緒に応援したい」と生涯サポーターであり続けるつもりだ。

 今後についても言及し、サッカー界のために監督を続けることに意欲を示した。長崎ではハードワークを武器に堅守速攻のチームをつくり上げたが「現代サッカーでハードワークは当たり前。サッカーのスタイルはいろいろ変わる。次のことを考えないと」と進化する戦術の先駆けになろうとする。

 そのヒントの一つと考えているのがラグビー日本代表だ。高木監督は15年に宮崎で行われていた同代表の宮崎合宿を見学した。長崎を指揮する前、熊本で監督だった当時はハンドボール女子の強豪、オムロンの練習も見に行ったことがある。

 「ラグビーもエディー(ジョーンズ前日本代表監督)の時はキックをあまり使わず、パスでつなごうとした。今はキックパスを使ってトライを狙っている。他競技を見るのは好きなので、そういったものも見ながら柔軟なものを求めていきたい」

 契約満了を通告されたばかりで、具体的には「何も決まっていない。考える状況も何も整っていない」という。それでも、古巣となる長崎を思う気持ちは変わらない。「J1定着にはチームのフィロソフィー(哲学)が大事。どういうチームをつくるのか。プレーだけでなく人間的にも紳士でなければいけない、とか。1年では難しい」と提言する。

 さらには、人材の宝庫と呼ばれる九州の有望な育成年代の選手たちにも着目する。「九州ってうまい子はたくさんいる。そういう子たちを育てていきながら『長崎ってこういうチームだ』と特徴のあるものをつくってほしい」と願った。

 今季の残り2試合は引き続き指揮する。「消化試合ではあるけど、最高だねと思えるように。良い去り方をしたい」と有終の美を誓った。

=2018/11/20 西日本スポーツ=

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