最速「157」いまだ覚醒前夜/ホークス2位・杉山一樹2

西日本スポーツ

指名あいさつに訪れたソフトバンクの永井球団統括本部編成・育成部長兼スカウト室長(右)に帽子をかぶせてもらう三菱重工広島・杉山一樹 拡大

指名あいさつに訪れたソフトバンクの永井球団統括本部編成・育成部長兼スカウト室長(右)に帽子をかぶせてもらう三菱重工広島・杉山一樹

 今秋のドラフトでホークスは支配下7人、育成4人の計11人を指名した。3年連続日本一を目指すチームに加わる平成最後のルーキーたちを紹介する。

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 高校3年生になった一樹は最速145キロの長身右腕として、プロの注目を浴びた。その一方で、父の貴康(46)は息子の様子がどこかおかしいと感じていた。ある練習試合でのこと。笑顔を見せながら投げる姿が、父の目には「てんぐになっている」と映った。

 イニング間に、父は大声で叫んだ。「もう、やめろ。退部届を出せ」。グラウンドであぜんとする一樹。あまりの激しさに止めに入る者もいた。この頃には既にプロを志していたが、夏の甲子園へ続く戦いが始まる前に「慢心」が見えるようでは…。親心だった。

 不安は的中した。夏の静岡大会に駿河総合高のエースとして臨んだが、初戦の2回戦で磐田南に敗退。5回で降板した一樹は9四死球を与えて2失点。その後、期限ぎりぎりまで悩んだプロ志望届は「初戦で負けたのに」という思いもあり、提出できなかった。

 高校卒業後、社会人の三菱重工広島に進んだ際に誓いを立てた。「3年でプロに行く。行けなければ(会社を)辞める」。野球がうまくいかなくても、社業で食べてはいける-。そんな甘えを振り払うためだった。荷物も布団や少量の衣類のみ。決意の表れだった。

 広島、阪神でプレー経験がある町田公二郎監督(49)は「課題は多かったが、素質の高さに驚いた」と振り返る。つきっきりの指導で右腕の振りをコンパクトにして、筋力トレなどで体重を10キロ増やした成果もあり、非公式ながら練習試合で最速157キロも計測。課題の制球も安定した。

 社会人で「強い球」を追求した大型右腕は、今夏の都市対抗野球にJR西日本の補強選手で出場。JR東日本との準々決勝で全国デビューし、初球で公式戦自己最速の153キロを出した。その後も大台を連発して脚光を浴び、再びプロの注目を集める存在となった。

 故郷静岡を離れてから3年目。両親が名前に込めた願い通りに大きく育った右腕は、ソフトバンクからの2位指名で夢をかなえた。高校3年時に刺激を受けた同学年の高橋純と小沢とはチームメートとして競い合う。プロでも活躍した恩師の町田監督が「まだまだこれから」と言い切る大器は、福岡で完全に覚醒する。 (文中敬称略)

=2018/12/13付 西日本スポーツ=

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