ソフトB千賀がポスティングでの米移籍にこだわる理由と、球団が容認しない理由

西日本スポーツ

ポスティングでの米大リーグ移籍を直訴した千賀 拡大

ポスティングでの米大リーグ移籍を直訴した千賀

 ソフトバンクの千賀滉大投手(25)がふと、無名の右腕だったころにタイムスリップした。

 「育成の頃、いつも西戸崎のあの浜辺から、あそこ(後述)で活躍してえ…って。本当に、ずっと思ってて。あそこで活躍して、あわよくば日の丸を背負って。そんな選手になりたいと思ってやってました」

 ソフトバンクのファーム施設が福岡県筑後市に移転する前、2016年1月までは福岡市内に「西戸崎合宿所」があった。博多湾を挟んだ対岸にはヤフオクドーム。見えてはいるのに遠い景色が、選手に夢と現実を見せ、意欲をかき立てた。蒲郡高から育成4位で入団した千賀も、そこにいた。

 この風景が原動力だった。28日に契約を更改した千賀は交渉の席で、昨年に続き、ポスティング制度による米大リーグの挑戦の希望を伝えた。「上を見続けてやっているだけでも違うと思う」からだと言う。

 「上を見て野球をできていた。1軍で投げるとか、日本一になるとか。特にこのチームでは、日本一になれている。次の大きな目標という意味でも。野球人としても人間的にも、もっと成長するために」

 順調でも千賀の海外FA権取得は2023年オフ。「5年後と言われると(目標として)漠然としてしまう」し、当時をピークで迎えられるかも分からない、というのが言い分だ。そこでFAと別の、ポスティング制度を利用しての移籍を志向するのだが、ソフトバンク球団は一貫して容認していない。

 三笠球団統括本部長は「国内FA権、海外FA権を取ってもずっとホークスでやってもらいたいというのが大前提」と球団方針を語る。「千賀君の気持ちは分かるけども、球団として何をメリットとして考え、ポスティングという権利を行使するのか。整理をしなきゃいけないことはたくさんある」と続けた。

 球団に見返りのない海外FA権で移籍する前に、球団に譲渡金が入るポスティング制度で移籍することが、選手と球団の妥協点になるケースもある。ただ資金力の面からも、ソフトバンクには魅力と映っておらず、仮にFAで移籍される結果になっても、それまで1年でも長くプレーしてもらうのが企業理念だ。

 事実として城島健司、和田毅、川崎宗則はいずれも、海外FA権を取得して海を渡った。同本部長は「特定の一人だけの話じゃない。今までずっとポスティングという選択を取らなかった球団。歴史と言ったらいいか。今回、もしそう(制度を利用)するなら、どういうことでそうするのか、議論をして、整理をしなきゃいけないよね、という話をした」と説明した。

 「環境とか選手の意識は変わる。考えなきゃいけないことではある」。前例踏襲を良しとはしていないが「一方で、日本のプロ野球選手と球団の関係は、いろんな歴史があって、そもそもFA権が認められて、海外FA権というものがある。球団も球団で、いろんな方針があってもいいと思う」と言い切る。

 さらに続けた。「12球団のいろんな方針がある中で『海外に早く挑戦させるべきだ』と野球界としてコンセンサスが取れるなら、選手会と話し合って、海外FA権の(取得に必要な)期間を短くするとかいうような議論があってしかるべきだし、そうなればなったで球団の経営を圧迫する要因にもなる」。引き留めのコストにも、早期の人材流出にもつながる。

 「それでみんな海外に行ってしまうようになったら、今の12球団が成り立つのかどうか…と、いうようなことを、総合的に考えなきゃいけない事案だと思う」。いわゆる“そもそも論”に行き着くほど、球団としての結論ははっきりしているということだ。

 千賀の要望については、年明けに別途、会談の場が持たれることになった。昨年要望した時にはなかったことで、千賀にとって前進と言えば前進ではあるし、球団は「契約交渉は来季の年俸を決める場。別立てで話をしましょうと。彼がどう考えているかを改めて聞く」(同本部長)との位置付けにとどめる。

 3年連続2桁勝利とはいえ、今季は故障続きで規定投球回に届いていない。千賀自身も、成績面での物足りなさを自覚した上で「周りにこうやって発信することで『あいつ、あんな成績でよう言えたな』ってならないように、自分にプレッシャーをかけられるのはいい」と、あくまで前向きに目標を追う。

 「今までウチの球団で、ここまでメディアに(ポスティングについて)言葉を発した人はいなかったと思う。やっぱり一歩目は、すごく言われてしまうかもしれないんですけど」と、批判も覚悟の上だという。球団との議論は今後、どう着地するか。

=2018/12/29 西日本スポーツ=

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