サニブラウンVS桐生9秒台決着へ秘策はシャッター

西日本スポーツ

 福岡市の博多の森陸上競技場を舞台に開催される陸上の日本選手権が27日に開幕する。同競技場は1990年代に国際大会を何度も開いたが、日本選手権の開催は初めてだ。同競技場のナイター競技も珍しく、気象条件が読めない中で行われる頂上決戦。サニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)や桐生祥秀(日本生命)を中心とした男子100メートルの9秒台決着へ。地元関係者には秘策があった。

 博多の森陸上競技場は、昨年3月末にトラックの改修を終えたばかり。コンディションは良好だが、博多の森にすむ、気まぐれな“女神”に気をもみそうだ。「ここは風向きが短時間で変わる。何とか追い風で走らせてあげたいが…」。日本陸上競技連盟副会長で大会を主管する福岡陸上競技協会の八木雅夫専務理事は頭を悩ませる。

 八木専務理事によると、バックスタンド裏にある高台から吹き下ろしの風が吹き、メインスタンドに当たって左右両方に分かれることが多い。この場合、100メートルは前半が向かい風、後半は追い風になる。しかも急に逆方向から吹くこともあり、読みづらいという。

 女子200メートルの元日本記録保持者で福岡大の信岡沙希重・短距離コーチも「トラック内で風が舞うイメージがある」と同調。ただ、教え子たちのレースを見て「良い風が来て好記録が連発することがある」と“女神”がほほ笑むことも少なくないと感じている。

 実際に快挙が生まれたのが1990年に同競技場で行われた「とびうめ国体」の少年男子A100メートル準決勝だ。当時、東農大二高(群馬)の3年だった宮田英明が追い風1・8メートルの好条件の中、10秒27を出し、従来の日本記録を0秒01更新した。200メートルでは98年アジア選手権の女子で新井初佳(ピップフジモト)が23秒67の日本新をマーク。信岡コーチは「スタートからゴールまで常に追い風になる『200風』が吹くことも多い」と好記録の誕生を期待する。

 今回の男子100メートル決勝は28日午後8時30分スタート。照明代が高い同競技場ではナイターの競技会をほとんど開いていないが、ナイター開催の数少ない例が93年9月の「TOTO国際スーパー陸上」だ。同年の世界選手権で金メダルを獲得したリンフォード・クリスティ(英国)が無風の中で出した優勝タイムは10秒06。今年4月末に八木専務理事らが夜の競技場を下見した際も無風だった。

 トラック種目は第1レーンに隣接し、ゴールから50メートル離れた地点に風向風速計を設置。2・0メートルを超える追い風は参考記録になる。そこでルールの範囲内で、好条件を生み出すための策を練った。100メートルのスタートライン後方とゴールライン前方にある、競技場外へと通じるシャッターを開閉して風向きを調整する案だ。100メートル決勝の約1時間半前に一度開け閉めして確かめる予定で、八木専務理事は「何とかうまくいってほしい」と願っている。しかも26日に梅雨入りし、大会中は雨模様。台風の不安もあり、八木専務理事は「予期しない強い風が吹かなければいいが」と気をもむ。台風直撃コースは外れる見通しのため、大会は予定通り開催する方向で準備を進めている。

 一方で、信岡コーチは収容人数3万人という競技場の大きさに着目する。国内の主要スタジアムと比べるとコンパクト。「注目度が高い今年は観客であふれ、ものすごい空気感になると思うので走りやすいのでは」と期待を膨らませる。日本陸連によると、23日時点で男子100メートル決勝が行われる28日は一部の席は残っているものの、メインスタンドの約5千席は完売。他の日も売れ行きは好調という。

 信岡コーチは2004年に鳥取での日本選手権で200メートルの日本記録(23秒33)を樹立した。「日本選手権は誰もが勝負を意識する。条件を気にせず、良い勝負に徹すれば記録もついてくる」と、男子100メートルでの9秒台決着を予想した。(末継智章)

PR

陸上 アクセスランキング

PR

注目のテーマ