子の一振りプロの一枚 玉竜旗準V福大大濠・西口選手の父 カメラマン貫く

西日本新聞

父の邦彦さん(右)と母の恵美さんに健闘をねぎらわれ、笑顔を見せる福岡大大濠の西口知成選手=29日、福岡市東区 拡大

父の邦彦さん(右)と母の恵美さんに健闘をねぎらわれ、笑顔を見せる福岡大大濠の西口知成選手=29日、福岡市東区

 玉竜旗高校剣道大会男子最終日の29日。福岡大大濠の先鋒、西口知成選手(3年)は強豪ひしめく準々決勝と準決勝で堂々の10人抜きを果たし、会場を沸かせた。決勝で敗れるまで、その姿をプロとして冷静に、でも父として優しげにファインダー越しに見つめるまなざしがあった。

 専門誌「月刊剣道時代」の専属カメラマンを務める邦彦さん(51)=横浜市。学生や社会人の全国大会が主戦場だ。幼稚園児だった長男の知成選手を道場に連れて行き、剣士への道を開いた。「写真を撮ってほしかったら勝ち上がれ」。ハッパを掛けられた息子は小6の大会で日本一メンバーに。強くなるために都内の中学に通い、動画で見た福岡大大濠の迫力に憧れた。

 剣道強豪校が覇を競う福岡。取材を通じて、その厳しさは知っていた。「なんでそんな激戦区に行くのか」。心配をよそに息子は旅立つ。そしてレギュラーの座をつかみ、全国大会を取材する父の前に現れた。

 「熱気を感じられて以前から好きだった」という玉竜旗は、父にも特別な大会になった。高校側の計らいで母の恵美さん(43)と3人で食事にも行った。普段は試合会場で息子に話しかけないが、最後の玉竜旗。すれ違う際に、「しっかりやれよ」と声かけした。

 撮影中はフラットな被写体として見る。「活躍だけでなく、打たれたところを撮るのも仕事」。息子も「集中しているので親を意識したことはないし、写真を楽しみにしているわけでもない」。自らの役割に徹する2人だが、試合を離れれば親子に戻る。「胃が痛いって人から聞いたけど、大丈夫か」と前夜に電話をかけた父。「優しいパパです」と息子は誇らしげだ。

 知成選手は決勝では相手先鋒に敗れた。悔しさをにじませながらも「やれることはやった。大濠に来て良かった」。閉会式後、保護者も交えた全員での撮影タイム。シャッターを切ろうとする邦彦さんに「入りませんか」と声がかかったが、「笑顔を下さい」とカメラマンに徹する姿に一同が笑い崩れた。息子は最高の笑顔だった。

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