バレー女子・鍋谷 亡き祖父との合言葉胸に前へ 中田ジャパン 機動力で魅せる

西日本スポーツ

 来夏の東京五輪でメダル獲得を狙うバレーボール女子日本代表で「ゴーグル姿のアタッカー」が話題を呼んでいる。25歳の鍋谷友理枝(大分・東九州龍谷高-デンソー)は今春の合宿中に右目を負傷しながら、ゴーグルを着用してプレー。5~6月の国際大会、ネーションズリーグでは速いテンポの攻撃とサーブで活躍した。亡き祖父から教わった「前へ」の精神で、中田久美監督(53)が目指す「伝説に残るチーム」のヒロインになる。 (西口憲一)

■合宿中に右目負傷

 スラリとした肢体を黒いゴーグルが引き締める。6月12日、ネーションズリーグ1次リーグ東京大会のセルビア戦。若手主体の編成とはいえ、世界ランキング1位の強豪を同6位の日本が3-1で倒した。途中出場ながら、チーム最多の16得点で逆転勝ちに貢献した鍋谷が異彩を放った。

 「点を決めて(流れを)変えたかった」。糸を引くようなストレートスパイク、変幻自在なサーブからのポイント、けれん味のないバックアタック。「誰にも負けない」と自負する機動力を生かした攻撃で、中田監督の起用に応えた。1次リーグ7勝8敗で決勝大会に進出できなかった日本の中で「鍋谷のスピード」は明るい材料になった。

 4月の代表合宿中にボールが当たって右眼球内を出血。「体は元気なのに、目が見えないから(代表から離脱)では悔しい」。都内の店舗でゴーグルを購入し、着用してのプレーに踏み切った。「曇ったり見えづらい部分もあったりするけれど、逆に集中力が高まったような気がする」とプラスに受けとめている。

■的絞らせない攻撃

 苦しい時も笑顔を忘れず、前向きな姿勢を崩さない。「前へ」の精神で明大ラグビー部を率い、1996年に95歳で亡くなった北島忠治元監督と親交があった祖父の紘一さんから学んだ。「逃げずに前へ、正面からぶつかっていく。私のように泥くさい選手は気持ちが伴わないと、プレーも伴わない。心と体があってこそ、技は生まれる」

 セルビア戦の前、闘病生活を送っていた祖父の余命がいくばくもないのを、鍋谷は弟から知らされた。1次リーグ敗退後、病院に祖父を見舞った。既に言葉を発することができなかった祖父が、鍋谷の「前へ、で頑張るからね」との言葉でほほ笑んだという。享年78歳。天国へ旅立ったのは数日後の6月29日だった。

 両サイドに加えて、バックアタックを含めた的を絞らせない攻撃は日本のテーマの一つだ。今年の最大目標でもある9月のワールドカップに向けて急務な骨格づくり。トータルバランスに優れ、自在性に富む鍋谷の存在価値は増す。「前へ、は私と祖父の永遠の合言葉だから」。まだ気持ちの整理もついていなかったはずの7月上旬、代表合宿での紅白戦のことだ。自らを鼓舞するように、相手コート目がけて魂のスパイクを打ち込む背番号11の姿があった。

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