震災が結んだ絆、聖地に足跡 熊本工の吉山と蓑茂

西日本スポーツ

6回2死、中前打を放つ熊本工・吉山。投手・土屋 拡大

6回2死、中前打を放つ熊本工・吉山。投手・土屋

関東第一に敗れ、甲子園の土を持ち帰る熊本工の蓑茂(右から2人目)

 ◆全国高校野球選手権2回戦:関東第一6-5熊本工(14日・甲子園)

 熊本工は12年ぶりの夏2勝に届かなかった。相手の機動力に翻弄(ほんろう)され、守備の乱れもあって失点を重ねた。3回戦には進めなかったが、3年前の熊本地震で大きな被害を受けた熊本県益城町に住む吉山綸太郎(3年)、蓑茂然(同)は甲子園でプレーする姿を地元の人たちに届けた。

■追い上げ及ばず

 2点を追う9回、熊本工は最後の追い上げを見せた。1死一塁から相手の連続暴投でチャンスを広げ、1点を返した。だが2006年以来の夏の3回戦進出は果たせなかった。

 2番で遊撃手の吉山は「甲子園で最後の試合をできてよかった。エラーもなかったし、力は出せたと思います」と涙はない。最後の試合は3打数1安打。四球を選んだ4回、内田雄大(3年)の適時打で一時同点のホームを踏み、守備でも難しいゴロを難なく処理した。

 「野球のことを考えられなかった」時期があった。益城町は3年前の熊本地震で大きな被害を受けた。当時中学3年の吉山の自宅は無事だったが、学校は休校になって野球部の練習も休止。勉強も野球もできず、約1カ月間、毎日避難所で高齢者のために食事や水を届けるボランティアをしていた。

 同町在住ながら熊本市内の中学校に通っていた投手の蓑茂も、吉山と同じく益城町でボランティアをしていた。「余震にビクビクしながら過ごしていた。野球や勉強どころじゃなかった」。学校が使えず、自主的に町内のグラウンドで練習していた時に吉山と知り合った。友達になり、ともに熊本工に進学。一緒に甲子園の土を踏んだ。

 吉山は九州学院との熊本大会決勝で同点の9回に決勝のスリーバントスクイズを決めた。蓑茂は甲子園初戦の山梨学院戦で先発し、5回2失点と試合をつくった。「中学校の時の友達や地元の人からいっぱいLINE(ライン)や電話をもらった。いろんな人に応援してもらっていたんだと思った」と吉山は周囲の支えに感謝する。

 吉山は甲子園で野球生活を終える。「やりきったので悔いはない。地元の人たちにも感動を届けられたと思う」と笑顔を見せた。大学で野球を続ける蓑茂は「また(周囲の人に)恩返ししていきたい」と誓った。さまざまな経験を人生の宝物にして、それぞれの人生を歩んでいく。 (前田泰子)

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