球児“脱丸刈り”広がる 「常識」に疑問 主体性重視へ 元球児記者、甲子園で聞いた

西日本新聞

帽子を脱いで整列する花巻東の選手たち。長めの髪が印象的だ=9日、兵庫県西宮市の甲子園球場 拡大

帽子を脱いで整列する花巻東の選手たち。長めの髪が印象的だ=9日、兵庫県西宮市の甲子園球場

 かつては丸刈りが当たり前だった球児の髪形に変化が表れている。夏の甲子園に出場中の強豪校にも“脱丸刈り”に踏み切った高校が登場。選手の主体性を重視しようと指導者の意識も変わりつつある。一方で「丸刈りありき」と考える九州の一部の高校には戸惑いも見られる。

 試合開始前、一列に整列した部員が帽子を脱ぐと、ふさふさの頭髪が-。甲子園常連校の花巻東(岩手)は、新チームが始動した昨夏から髪形は部員が自由に選べるようにした。

 「彼らを大人扱いしないといけない」と語るのは佐々木洋監督。自分たちにできることは自分たちで正しく判断し、行動してもらおうとの狙いだ。高校野球の世界には、練習方法からあいさつの仕方まで伝統的に受け継がれてきた「常識」が多い。「私も高校の頃はそれらを疑うことはなかった」と佐々木監督。監督になり丸刈りという常識に疑問を感じ、部員たちに必要なこととそうでないことを主体的に考えさせるための試みだという。

 当初混乱したのは部員の方だったが、理解も早かった。金沢永輝選手(3年)は毎朝数分、寝癖を整えるようになった。「面倒でも手入れを怠ると、かっこ悪く見えてしまう」。髪を伸ばせばその分、生活態度も整える必要がある。自己管理の意識が、プレーにも好影響を生んでいる。

 旭川大高(北北海道)も丸刈りはしない。加藤新大選手(3年)は、周囲の視線を意識するようになった。世間にも野球部は丸刈りが当たり前との見方がまだあり、髪を伸ばしているだけで「だらしない」と思われるのではと指摘。だからこそ「私生活をちゃんとしないといけないという責任感が芽生えた」という。

 一方、夏の甲子園に出場した九州の高校はみな丸刈り派。指導者の強制はないが「そうなっているから」と多くの部員は受け止める。海星(長崎)の加藤慶二監督は「球児は丸刈りでないと不自然」との考え。ただ、髪形自由化は時代の流れとも感じている。「部員から納得のいく脱丸刈りの理由が聞けるなら意見を尊重する」

 日本高校野球連盟によると、全国の高校野球部員数は2016年の17万人超をピークに今年5月時点では約14万人に減少。連盟幹部は「丸刈りも部員減少の一因かもしれない。多様化の時代で、校則に反しないならいろんな髪形があってもいい。各校で是非を考える時期に来ている」と話している。

 記者自身も元高校球児、入部前に先輩から髪の長さを指摘され、嫌々ながらバリカンで頭を丸めた記憶は思い出すのも苦痛だ。かつては誰も疑問を持たなかった。取材を通じ、この問題について真剣に考えてくれている高校野球関係者と出会えたことに感謝している。(西田昌矢)

PR

PR

注目のテーマ