柔道井上監督のひそかな願望 ラグビーは「やってみたい競技」

西日本スポーツ

 9月20日開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会まで1カ月に迫った。柔道男子日本代表の井上康生監督(41)はラグビーを「やってみたい競技の一つ」と語り、元日本代表の五郎丸歩(33)=ヤマハ発動機=とも交流がある。リオデジャネイロ五輪での柔道男子全階級メダル獲得は15年W杯の南アフリカ撃破が発奮材料だったと感謝。柔道世界選手権(今月25日~、東京)で桜の勇士に弾みをつける“恩返し”の活躍を誓った。 (末継智章)

 -ラグビーに興味を持ったのはいつから。

 「最初に心に焼き付いたのは、子どものころテレビで見た(大学ラグビーの)早明戦。純粋に格好良さを感じた。当時、社会人で強かった神戸製鋼の印象も強い」

 -柔道と相通じる部分を感じていた。

 「もしやれるならばやってみたい競技の一つ。柔道と同じく激しさがある一方で、相手や競技そのものを重んじる心がある」

 -特に魅力に感じる部分は。

 「どんな相手だろうが心を一つに戦っていく姿勢。あれだけの強靱(きょうじん)な肉体を持った人間が跳んできたりぶつかり合ったりする。大げさに言えば、(交通)事故と一緒の衝撃を受けている。それでも勇猛果敢に戦う姿は、われわれ(柔道で)闘う人間として魅力を感じる」

 -五郎丸とは日本スポーツ界全体の発展を考えて活動している。3月には神奈川で一緒にスポーツイベントを開いた。

 「五郎丸君とは雑誌の対談で知り合い、話をする中で競技に対する考え方や誇りなどの面で共通する部分があった。今後のスポーツ界を考える中で、非常に学ばせてもらっている一人。自宅も近く、家族ぐるみで仲良くしている」

 -その五郎丸も活躍した前回W杯は見たか。

 「もちろん。近年で一番感動したスポーツ、戦いの一つだった。南アフリカ戦は誰もが打ち破ると想像していなかった。しかし選手たちが勝利を信じて戦った姿は私の胸にも感動を与えてくれた。本当に昨日のように思い出す」

 -印象的な場面は。

 「五郎丸君のキック力もそうだけど、東海大の後輩になる(主将の)リーチ君の状況判断。(3点差を追う)終了間際に(相手の反則で)ペナルティーキックを得たが、PG(の3点)で同点にするのではなくスクラムを選択して逆転トライに結びつけた。柔道も最終的に畳の上で闘うのは選手。どれだけ自分自身を信じて自主的に闘い、しっかりと判断ができる人間になれるかが大きなテーマになる。その面で(リーチの決断は)学ばせてもらった」

■自分たちの持つ能力を信じて

 -実際にリオデジャネイロ五輪の男子日本代表にも自主性を説いた。

 「15年のW杯についてはよくミーティングで話した。ラグビーが非常に盛り上がっていた面があったので、五輪で柔道が活躍してラグビー以上の反響が出るような試合をしようとも説いた。男子が全員メダルを獲得できたのは、ラグビー日本代表が大きな力を与えてくれた面もあった」

 -自国開催の今大会もリーチ主将が精神的支柱になっている。

 「4年前以上に周りから期待されている中で戦わないといけない。地の利を生かせることもあるだろうが、それ以上に大きなプレッシャーを感じるはず。ただ、それをはね返すだけの練習をしているのではないか。自分たちの持つ能力を信じ、目標を達成できると信じ、最高のパフォーマンスをしてもらいたい」

 -4年前も(6~7月に行った)今回も宮崎市で行った長期合宿は厳しかった。柔道も同じ宮崎(延岡市)で合宿した。

 「五郎丸君からも話を聞いた。試合は何が起きるか分からない。きついことにも耐えうるよう、厳しい練習の中でも質を求めているのだろう。われわれの合宿では試合に勝つための準備をどれだけできるかというのがテーマだった。組み際の攻防を想定させるなど、量より質を求めた練習を採り入れた。宮崎は食や練習環境、支えてくれる人々が素晴らしい場所で、非常にありがたい」

 -柔道もW杯直前の25日に世界選手権が日本で開催され、来年は東京五輪が控えている。

 「ラグビーも柔道も一度結果を出した分だけ人々の目は肥え、それ以上を期待されている面はある。大変な戦いにはなるが、自分たちがつくりあげた結果。この結果があるからこそ今のチームをつくりあげられている。重圧がないと言ったらうそになるけど、これも想定内。いかに重圧をエネルギーに変えて、2020年(の東京五輪)をどう成功させていくかを考えて取り組む」

 -柔道の日本代表の活躍はW杯の日本代表にもいい刺激になるのでは。

 「今度はわれわれが微力ながら力になるような闘いを見せたい。もちろん、今年のW杯でも日本代表からエネルギーをもらうと思う。いい意味で切磋琢磨(せっさたくま)しながら来年の東京五輪へ向かっていきたい。ラグビー日本代表にはやるからにはトップを目指してほしいですね」

 -ラグビーW杯や東京五輪を経て日本スポーツ界に望むことは。

 「戦った選手だけでなく周囲の方々も『日本でW杯や五輪があったからこそよりスポーツが発展し、進化した』と言えるようにすることが大事だ。大会が終わっても、われわれは戦い続ける。成績はもちろん、先を見据えて考えることが必要で、われわれで言えば柔道や五輪とは何なのかを胸に刻みながら闘うつもりだ」

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