名門校出身、元ラガーマンの競技愛 宇宙空間でプレー

西日本スポーツ

 20日開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会まで残り2週間に迫った。ラグビーに関心を持つ他分野の著名人が魅力を語るインタビュー企画の第5回は、宇宙飛行士の星出彰彦氏(50)。1988年度の全国高校ラグビー大会で優勝するなど「校技」だった茗渓学園(茨城)時代に夢中になり、初の宇宙飛行に楕円(だえん)球を持っていったほど。国籍の違う多様な人材が一つの目的に向かう日本代表を宇宙開発と重ねて共感を覚え、その強みを武器に初の8強入りを期待する。 (取材・構成=大窪正一)

■代表発表の日 私がドキドキ

 -中学から留学する高校2年まで茗渓学園に通った。

 「部活は水泳部だったが、ラグビーが盛んで体育の授業や球技大会などで触れる機会は多く興味があった。W杯の日本誘致に尽力され、現在はW杯組織委員会の徳増浩司事務総長特別補佐も当時、英語教師として別のクラスの担任だった。留学したシンガポールの高校の部活でラグビーを始め、慶大でも理工学部のラグビー部に入部した」

 -ラグビーに魅了された。

 「15人という大人数でポジションごとに多様性があり、さまざまな長所を持った人が団結してチームとして成果を出す。今の仕事に通じるところがある。国際宇宙ステーション(ISS)のミッションは宇宙飛行士一人では何もできない。エンジニアから管制官など大きなチームの中の一員。そこはラグビーと共通している」

 -W杯に臨む日本代表31人の半数近くが外国出身。多国籍で多様性のあるチームになった。

 「なぜか発表の日は私がドキドキしていた(笑)。誰が選ばれるんだろうと。私たちが宇宙でのミッションに臨む時もいろいろなバックグラウンドを持った人が集まる。パイロット、医者、エンジニアだったり、科学者だったり。同じタイプの人だけを集めるよりも、それぞれの長所を束ねたほうがチームとしては強いと思う」

 -強みになる半面、「ワンチーム」になる難しさもあるのでは。

 「結局は人。その人のキャラクターを尊重することが大切だ。国や文化、言葉が違ったりしても宇宙でミッションを成功させたい思いは一緒。自分もアメリカでは少数派。例えれば、過去のラグビー日本代表の外国人選手に近いのではないか。でもアメリカ人だから、ロシア人だからというのはない。困難にぶち当たった時、一緒に作業、協力してやる。国籍がどうこうなんて全く関係ない。そこも似通っている」

 -ラグビーの競技の特性、文化はそうした絆を生み出しやすい。

 「そうかもしれない。体を当てる、恐怖や痛みを分かち合う。苦しみであったり、同じ釜の飯を食ったり。ワンチームになれるプロセスなのかと思う。前回W杯のツイッターで五郎丸選手が『母国の代表になれるかもしれないのに、日本代表を選んでくれた』という内容を書いた。そこまでして日本のために。誇りを持って戦ってくれる。誰に強制されたわけではない。尊敬にあたる」

 -2008年の初の宇宙飛行ではラグビーボールを持ち込んだ。

■無重力なのでパスできない

 「宇宙でパスをするとどうなるんだという好奇心ですね(笑)。地球上だと重力で放物線を描くが、無重力なので上にいってしまいうまく投げられなかった」

 -他に宇宙飛行士でラグビー経験者は。

 「一緒に宇宙飛行したメンバーの中に大学でやっていたという人はいる。アメリカで人気スポーツの野球やアメリカンフットボールなどと比べればまだまだだが、ラグビーのプロリーグも2年前から発足し、知名度は上がりつつある。(米航空宇宙局=NASA=のジョンソン宇宙センターがある)ヒューストンにもチームがあり、見に行っている」

 -記憶に残っている試合は?

 「強烈に印象に残っているのは大学ラグビーの雪の早明戦(1987年)。最後のスクラムで湯気が立っているのをみて鳥肌が立った。こんなスポーツがあるんだと。東京・秩父宮で日本がスコットランドに28-24で初めて勝った試合(89年)もスタンドで観戦していた。あとは何といっても前回2015年W杯で日本が勝った南ア戦。最初の10分で『あれ、なんか違う』と鳥肌が立った。ダブルタックルも頑張っていたし、ほふく前進してでも前に進もうとする姿。ジャージーを着て泣きながら見ていた。今でもウルッとくる。勇気をもらった」

 -歴史を変えた一戦から4年がたった。

 「あのW杯の経験があって常に強い安定感あるチームになった。宇宙開発分野でも日本はアメリカやロシアに比べれば後発。ラグビーでいえばニュージーランドや南アフリカを追うような立場で追い上げてきた感じだが、それと日本代表の歩みが似ていると勝手に思っている。世界と渡り合える力をつけた」

 -2020年にISSに長期滞在し、船長も務める。

 「今は次のミッションに向けてアメリカ、ロシア、日本、欧州といろんなところで訓練中。W杯期間中は国内外を行ったり来たりでどこの国にいるかは分からない」

 -日本代表へのエールやラグビーを初めて見る方へメッセージを。

 「私のポジションだったSHに目が行くが、すべての選手に注目している。覚悟をひしひしと感じる。8強、優勝だって視野に入っているチームに期待している。世界のトップチームが日本に集結する絶好の機会。ラグビーに関心がなかった方も日本代表の応援だけでなく、各チームの試合も実際に見て体と体のぶつかり合いなどその迫力を感じてほしい」

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