大逆転で連覇の西武「茶髪であろうが何でもいい」辻監督が作った気風

西日本スポーツ 小畑 大悟

 ◆ロッテ4-12西武(24日・ZOZOマリンスタジアム)

 大逆転Vで令和最初の覇者だ! 西武が2年連続23度目(前身の西鉄を含む)のパ・リーグ王者となり、辻発彦監督(60)が千葉の空で舞った。優勝へのマジック2で迎えた24日、先に2位ソフトバンクが敗れ、西武はロッテに快勝。8・5ゲーム差をひっくり返し、142試合目でゴールテープを切った。だが、戦いは終わらない。昨年ソフトバンクに苦汁をなめさせられたクライマックスシリーズ(CS)を突破し、2008年以来11年ぶりの日本一を狙う。

■10度宙に舞う

 涙はこぼれなかった。たくましくなった選手たちに身を委ね、辻監督は笑った。千葉の夜空に10度舞った。「選手たちの頑張りに私たちもびっくりするくらいだった」。開幕から首位を守り続けた昨年から一転、最大8・5ゲーム差からの逆転V2。平成最後のリーグ王者は時代をまたぎ、令和の初代覇者となった。「今年は苦しくなかったよ。プレッシャーは昨年と比べたら天と地ぐらい。全然苦しくなかった」。偽らざる本音だった。

 負ければソフトバンクのマジック再点灯もあり得た142試合目は今季を象徴する快勝。自慢の打線が序盤に爆発し、逆転Vの立役者となったニールが踏ん張った。8回1死、平井をコールした時、宿敵の敗戦が伝わった。勝てばV。9回、今年初めてマウンドに出向き、守護神の増田にボールを手渡した。「優勝投手を楽しめ」。間もなく歓喜の時は訪れた。

 あの涙がスタートだった。忘れもしない昨年10月21日。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでソフトバンクに屈した。「悔しいです。ここで今シーズンが終わるとは考えていなかった」と大観衆の前でおえつした。「そんなの見たくもない。ニュースの映像で出て、また出たって。もう絶対に泣かないからな」と誓った。

 苦戦は予想されていた。オフに菊池(マリナーズ)、浅村(楽天)、炭谷(巨人)と主力3人が抜けた。「旗(ペナント)を取りに行くぞ」とシーズンに臨んだが、ソフトバンクに開幕3連敗。勝率5割前後を行き来し、タカの背中は遠のいた。「8月に入るころまではAクラスとしか考えられなかった。上より下を見ていたから。(2位争いをしていた)日本ハムや楽天がすごく気になっていた」と明かす。

 その中で大きな決断を下した。8月11日のロッテ戦(ZOZOマリン)。不調の山川を2年ぶりに4番から外した。「我慢したよ。山川だけは絶対にずっと代えないでいくつもりだった」。我慢強い性格を自負する指揮官が覆した「絶対」。本人に直接伝えることもなかった。「チームをずっと支える真の4番にはまだ足りない」。代わって4番に座った中村が勝負強さを発揮すると潮目は変わった。9月11日に初めて首位に立ち、同15日にマジック9を点灯。一気に突っ走った。

■離脱者少なく

 「正直言って層が薄いからね。それが現実だから」。豊富な戦力を有するソフトバンクに競り勝てたのは長期離脱者が出なかったから。規定打席到達者は8人を数える。辻監督は“壁”をつくらず、選手たちと接し、状態を把握。試合後は選手ロッカーを通って監督室に向かう。「普通にフレンドリーにしゃべれる方がいいじゃん。選手が何をしようが、茶髪であろうが何でもいい。ちゃんとグラウンドでやってくれれば。野村(克也)さんには(文句を)言われるけど」と笑った。

 昨年末の故郷佐賀。父広利さんの三回忌で墓前に優勝を報告。「お墓でいろんなことをお願いしたらいかんと聞いたから。頑張るよ」とV2への誓いを立てた。CSを突破し、日本一に輝いてこそ涙からのストーリーはハッピーエンドを迎える。「ここまできたら日本シリーズに連れて行ってあげたい。特別だよ。日本中でその1試合しかやっていないからね」。その時は「絶対」を破って涙がこぼれるかもしれない。 (小畑大悟)

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