リーチ控え 電話で「相談がある」

西日本スポーツ 大窪 正一

 ◆ラグビーワールドカップ(W杯)1次リーグA組 日本-アイルランド(28日・静岡スタジアム)

 優勝候補の一角、アイルランドとの大一番へ。日本は抜群の統率力を発揮してきた主将のリーチ・マイケル(30)を控えに回し、試合終盤に切り札として起用する「賭け」に出る。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)(49)と日本協会の藤井雄一郎強化委員長(50)が路上の会談で決断した。

 重圧をはねのけたロシア戦から2日後の22日朝。東京・秩父宮ラグビー場での練習前、ジョセフHCから藤井強化委員長に電話があった。「選手起用で相談がある」。声にいつもの陽気さがない。その低いトーンに事の重大さを感じ取った。

 同学年の2人は宗像サニックスが社会人下部チームだった選手時代から20年来の盟友。ただ、歩んできたラグビー人生は対照的だ。藤井氏は自ら売り込んでニコニコドーに入社。生鮮食品担当として馬刺しをさばきつつ、ラグビー部で主将も務めた。廃部後、サニックスへ。現役だったジョセフ氏と出会った。ニュージーランド代表でW杯にも出場したエリートは、彼のたくましさや情熱に好感を持ち、意気投合。2人の友情はジョセフ氏が帰国しても続いた。3年前、ジョセフ代表HCが誕生すると、サニックスを指揮する盟友に代表参謀入りを懇願した。

 メンバー決定はジョセフHCの専権事項だが、後押しが欲しかった。秩父宮ラグビー場での練習を終えると普段は車を使う宿舎への道をこの日は2人並んで歩いた。初めてのことだ。宿舎まで約30分。ジョセフHCが口を開く。春先に痛めた股関節の影響でロシア戦は本調子ではなかったリーチ主将の起用方法だ。精神的支柱の主将をW杯通算10試合目にして初の控えに回すか。「ワンチーム」を掲げる結束に影響を及ぼす危険もはらむ。

 対アイルランドは過去9戦全敗。「勝負を懸けないと何も生まれない」。藤井強化委員長はリーチ主将を勝負どころでの「切り札」として起用を進言。実績にとらわれず、状態の良さを重視するジョセフHCもうなずいた。宿舎への上り坂を歩き終えた2人の表情は晴れやかだった。

 「吉」と出るかは分からない。結果次第で批判も覚悟の上。全力で勝ちにいく姿勢を貫くことで収穫はある-。史上初の8強へ。福岡で生まれた2人の絆と信念は揺るがない。 (大窪正一)

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