久光製薬に「ママさんセッター」 乳幼児は…復帰を後押しした夫の言葉

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

復帰後も華麗なトスワークで久光製薬の攻撃を支える小島 拡大

復帰後も華麗なトスワークで久光製薬の攻撃を支える小島

意気込みを語る小島 練習試合で得点後、仲間と喜ぶ小島(右から2番目)

 バレーボールのVリーグ女子が12日に開幕する。3連覇を目指す久光製薬に2016~17年シーズン限りで引退していたセッターの小島(旧姓・中大路)絢野(28)が結婚、出産を経て復帰。セッターの人数不足に陥ったチームに請われ、授乳している息子と共に練習場近くに引っ越した。数々のタイトル獲得に貢献した司令塔が「ママでも日本一」を目指して再び動きだした。 (伊藤瀬里加)

 リーグ開幕を前に、9月下旬に行われた練習試合。若手主体の久光製薬メンバーの中で、周囲と積極的に言葉を交わす28歳の小島の姿があった。

 「自分が第一線に立って走るというより、見守るというか…」

 全日本のエース石井優希、故障からの復帰を目指す元代表の長岡望悠らと同学年。競技力向上のために全てを犠牲にして戦い、「やりきった。後悔はない」と16~17年シーズン限りで一度は去ったコートに戻ってきた今、その頃とは別の感情が芽生えている。

 「今までバレーボールの世界という殻に閉じこもりがちだったけど、『私には子どももいる』という心のゆとりが生まれた。(もうすぐ11カ月になる)子どもの存在がパワーになっている」。17年6月に結婚し、翌年に長男の怜ちゃんを出産した。

■授乳している息子1人

 教員の夫・啓太郎さん(28)と怜ちゃんと佐賀で暮らし、バレーボールをする機会はほぼなかった。復帰の話を持ち掛けられたのは今年7月。選手の引退や退団などでセッターが1人となり、久光製薬の酒井新悟監督からオファーを受けた。

 迷った。夢にも思わなかった復帰話。チームに入ると練習や試合で遠征が多い。授乳中で競技者としての体力維持も難しい。幼子の面倒はどうするのか。練習場は神戸市…。背中を押したのは夫の言葉だった。「寂しいけど、日本トップのチームから声が掛かるのはすごいこと」。覚悟が決まった。

 8月中旬、佐賀県内で合宿を行っていたチームに合流。9月からは怜ちゃんと神戸市にある練習場の近くに引っ越した。チームからはベビーシッターの手配なども提案されたが、練習日は京都に住む母の真奈美さん(54)に住み込みで家事、育児を手伝ってもらうことになった。遠征時も主に母が怜ちゃんを預かる。多くの人たちの励まし、サポートを受けながら、考え方も変わった。

 バレーボール界では35歳の荒木絵里香が結婚、出産を経て日本代表として活躍するが、「ママさん選手」はまだ珍しい。「もう少し増えてほしい。お母さんになったらみんな強くなる。その強さがチームに対してプラスになるはずだ」と強く思う。

 常勝軍団に加わった新たなピース。「自分も絶対に、日本一に関わりたい。チームの役に立てるよう、自分なりの役割を全うしたい」。再出発した司令塔に導かれ、久光製薬がさらに強くなる。

   ◇    ◇

日本の主なママさんアスリート

 ◆谷(旧姓田村)亮子(柔道女子48キロ級) 2個の金メダルを含む五輪5大会連続でメダル獲得。プロ野球選手の谷佳知と2003年に結婚し、04年アテネで五輪金。出産を経て「ママでも金」を目指して臨んだ08年北京五輪は銅。

 ◆岡崎朋美(スピードスケート) 1998年長野五輪女子500メートル銅。2007年の結婚後に挑んだ10年バンクーバー五輪まで5大会連続出場。同年に出産した後も、14年ソチ五輪出場を目指して現役を続けた。

 ◆荒木絵里香(バレーボール) 2012年ロンドン五輪で主将として銅メダル獲得に貢献。結婚、出産を経て16年リオデジャネイロ五輪に出場し、東京五輪に挑む日本代表にも名を連ねている。

 ◆本橋麻里(カーリング) 五輪に2大会出場した後の2012年に結婚、15年に出産。主将として臨んだ昨年の平昌五輪で銅。競技の合間の「もぐもぐタイム」が話題に。

 ◆寺田明日香(7人制ラグビー、陸上) 陸上女子100メートル障害のトップ選手として活躍後、2013年に現役引退。結婚、出産を経験した後の16年に7人制ラグビーに転向し日本代表練習生などとして活動。今年に入って6年ぶりに陸上に復帰。9月に女子100メートル障害で日本新記録の12秒97をマーク。

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