“エディーの呪縛”解き放ち、こうして日本は強くなった

西日本スポーツ 大窪 正一

 ◆ラグビーワールドカップ(W杯)1次リーグA組 日本28―21スコットランド(13日・日産スタジアム)

 壁を打ち破った。南アフリカを破り世界を驚かせた「ブライトンの奇跡」から4年。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)はたくましく成長し、新たな歴史の扉を開いた桜の勇士を満面の笑みで見つめた。

 2016年秋。元ニュージーランド(NZ)代表の新指揮官は失望を感じていた。歴史的3勝を挙げた15年W杯で活躍した選手が次々と代表から引退。招集しても「燃え尽き症候群」で応じない選手までいた。一方、残ったW杯経験組は成功体験に引きずられていた。

 前指揮官のエディー・ジョーンズHC(現イングランド監督)は猛練習に加え、言動や服装などにも規律を求めた。「言われたことをひたすら実行した」。リーチ・マイケル主将が振り返るように追い込まれながら「ロボット」に徹したことで負の歴史を塗り替えた。

 自主性を重んじる「オールブラックス」を経験したジョセフHCはさらなる飛躍に変革を求めたが、選手には「エディー流」に誇りと自負があり、両者の前に深い溝が生まれた。ジョセフHCは世界最高峰リーグのスーパーラグビー(SR)の「ハイランダーズ」を優勝に導いた経験があるとはいえ、W杯の指揮は未経験。世界的名将の前指揮官と比べ、選手が値踏みする空気もあった。

 その溝を埋めたのが、ジョセフHCが信頼する参謀2人だ。20年来の盟友、日本ラグビー協会の藤井雄一郎強化委員長が潤滑油として選手の不満や誤解を解いた。ハイランダーズ時代からコンビを組むトニー・ブラウン攻撃コーチは戦術眼に優れ、多彩で柔軟な策を提示。結果を出すことで求心力を高めた。

 昨年9月の代表候補合宿。ミーティングに長い時間を割いた。ジョセフHCは「王国NZ」の考えを押しつけるのではなく、日本人の気質も踏まえ、選手の声に耳を傾けた。日本代表の特徴は多国籍。NZ・オタゴ大で心理学を学んだ経験も生かし、甲冑(かっちゅう)を日本チームの象徴として宿舎に置くなど結束への仕掛けも増やした。

 「エディーさんの時とは違う考えと手法で強化し、全く違うチームになった」とジョセフHC。SRの日本チーム「サンウルブズ」の経験や柔軟な戦術、豊富な練習量、選手主体の決断力…。躍進の要因は多い。その一つ一つが「エディーの呪縛」を解き放ち、「ワンチーム」になれたからこその8強入り。悲願への挑戦と達成が日本中にラグビーのムーブメントを巻き起こした。 (大窪正一)

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