「奇跡」立役者ヘスケスが「金星再現できる」 準々決勝南アフリカ戦
もう一度南アフリカを倒せ!! ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で初めて8強入りしたA組1位の日本は20日、味の素スタジアム(東京)で行われる準々決勝でB組2位の南アフリカと対戦する。2015年イングランド大会の初戦で破った因縁の相手だ。その試合、終了間際に逆転トライを決め、「ブライトンの奇跡」を起こした元日本代表WTBカーン・ヘスケス(34)=宗像サニックス=がこのほど本紙の取材に応じ「日本はもう一度勝てる」と太鼓判。金星再現の鍵として二つのスピードを挙げた。
-日本が1次リーグ4連勝で8強入りした。
「少しずつピークを上げ、波に乗っている。初戦のロシア戦は緊張していた。4年間受け続けた期待や開催国ということで、見えない重圧があったのでは。ロシアに勝って悪い意味での緊張感を外に出したようで、アイルランド戦は守備が堅く相手に前進を許さなかった。常に一枚の壁になった守備を見ると、負けるとは思えなかった」
-自分も出たかった?
「ちょっとは思うけど、見ている方が楽しいよ。試合を通じて、どれぐらいトレーニングがハードだったか分かるから(笑)」
-タフさは特に守備で表れている。
「エディー(ジョーンズ前ヘッドコーチ、現イングランド監督)のときは大きな相手に対し、1人で勇気を持って倒そうというスタイルだった。ジェイミー(ジョセフ・ヘッドコーチ)は2人がかりでタックルし、すぐ立ち上がる(リロードの)運動量を求めている。特にトンプソンを見たら分かるが、相手がボールを持った時点でタックルしているので、すごく速い。こうなると相手はゲインラインの後ろで止まり、攻撃の形をつくれない」
■チェスのような心理戦になる
-準々決勝は南アフリカと再戦する。
「相手は前回の雪辱を果たしたいはず。一方で今大会の直前に(41-7で)日本に勝ったから、今度も楽に勝てるという心理も働くのでは。チェスのような心理戦になりそうで面白い」
-4年前に勝利を決めた逆転トライはW杯の中でも最高な瞬間の一つとして、今大会の会場で繰り返し流れている。
「あれはチームの力で取ったトライ。(同じく会場で流れる2003年大会決勝で勝ち越しのドロップゴールを決めたイングランド代表の)ウィルキンソンは個人の技術で成し遂げたもので違う。でもすごくうれしいし、誇りに思っているよ」
-今回の南アフリカをどう見るか。
「プレースタイルは変わらないが、初戦で当たった前回大会よりも状態はいい。今回もオールブラックスとの初戦は高いレベルまで達していないと感じたが、8日のカナダ戦は強さを感じた。スペースをうまく使い、SHがトライを決めたかと思えばロックも決める。同じくカナダと戦ったオールブラックスと比べても南アフリカの方が良かった」
-警戒する選手は。
「一人の選手だけに注目するのはもったいないぐらい、全員脅威だ。あえて言うなら、スピードとステップに優れ、力強さもあるコルビ。後はエルトン・ヤンチースかな。昨年までトップリーグ(のNTTコミュニケーションズ)でプレーしたけど、フットワークが軽くて賢い」
-日本が勝つチャンスはある。
「勝つチャンスはある。W杯前に負けたときと比べ、日本の方がチーム力は伸びている。守備でラインを上げるスピードを速く保ち、ゲインラインの後ろで止めれば、相手は何もやる余裕がなくバラバラになるはず。優れたボールキャリアーが多いので、彼らの推進力を止められるかどうかが鍵になる。80分間集中力を保つ必要もある」
-ヘスケス選手のような、劇的な決勝トライを決めるのは誰か。
「(福岡)堅樹には(当時のヘスケスと同じ)23番を着てインゴールの左隅に行け、と伝えたよ(笑)。それは冗談だけど、堅樹は自陣のゴールラインからでもトライを取り切る脚力がある。僕は10メートルしか走れないけど、彼は何でもできる」
-福岡は3試合連続で計4トライと勢いがある。
「アイルランド戦の終盤にボールを奪って独走になった瞬間も、完璧にトライを取ったと思った。最後に止められたのは痛めた右脚が完治していなかったのだと思う。もう大丈夫のはずだ」
■過去を上回る活躍してほしい
-日本は前回大会を上回る盛り上がりを見せている。前回のヒーローとして寂しさは。
「まったくない。こうなるのが目的だったから。物事がうまくいけば次の目標を設定し、達成した姿を見た若い世代がさらに高い目標に向かう。これを少しずつ積み重ねることで、日本はもっと強くなる。どんどん過去を上回る活躍をしてほしい」
-W杯優勝国は。
「まずは準々決勝。自宅で日本が勝つのを祈って見るよ」 (聞き手・構成=末継智章)