清宮ドラフト「外れ1位」ヤクルトが村上に決めた1本のホームラン

西日本スポーツ

 ヤクルト・村上宗隆内野手(19)が大ブレークのシーズンを終えた。36本塁打は、高卒2年目以内では1986年の西武・清原和博(31本塁打)を抜き、53年の西鉄・中西太に並ぶ歴代最多。96打点ともにセ・リーグ3位の活躍だった。現役時代に福岡ダイエー(現福岡ソフトバンク)などで投手としてプレーした松田慎司氏(51)はヤクルトの九州地区の担当スカウトとして村上を熊本・九州学院高時代から見守ってきた。十代の若さで夢のアーチを描く「令和の怪童」の魅力を語ってもらった。
(聞き手・構成=西口憲一)

 -2017年秋のドラフト会議では実に7球団が東京・早実高の清宮幸太郎(日本ハム)を1位で指名した。まさに「清宮ドラフト」-。東京の神宮球場を本拠とするヤクルトも当然のように参戦した

 世間体からも1位は清宮君。高校生であれだけ一発を打てる野手はなかなか出てきませんから。

 -その年のヤクルトは球団史上最多の96敗で最下位。チーム本塁打95本はリーグ最少だったが、2桁勝利ゼロというチームの立て直しへ、即戦力投手の1位指名は選択肢になかったのか

 まず清宮君でいって、次に即戦力(投手)という考えもありますが、高校生で大きいのを打てる野手が、あの年は3人もいました。和製大砲は毎年、いや永遠のテーマ。清宮君の他に(大阪・履正社高の)安田尚憲君(ロッテ)と村上。この3人までは野手でいこうと。そういう話をスカウト部でしていました。

 -なぜ「外れ1位」が村上選手だったのか

 うちはその年ぐらいから、上位候補を別地区のスカウトも視察するクロスチェックを始めました。6月の上旬ぐらいに九州学院のグラウンドで長崎の学校を呼んで練習試合があり、小川淳司シニアディレクター(SD)や別のスカウトが集まって村上を見ました。彼の評価が上がった試合でしたね。いきなりガン!と本塁打を打ちました。(スカウトが)みんな来ている前で打つ。うちだけではない。5、6球団は来ていました。村上に関してはジャイアンツさんも熱心でした。楽天さんも(担当スカウトが幹部を連れて)よく見に来ていました。

 -高校通算52本塁打の中でも印象に残る一発となった

 九州学院のグラウンドはネット裏に建物があるので、私たちは三塁のベンチ上、相手チームの上ぐらいから見ていました。(左打席の村上の)構えもよく見えて、スイングの迫力も伝わってきました。本塁打の打球方向は左中間でした。九州学院の坂井宏安監督の話では、村上の打球方向はレフトから順番に「3割、3割、4割」の割合だそうです。左のスラッガータイプは普通ならセンターから右が多いんですが、逆方向に持っていけるのは本当に力がある証拠。筒香嘉智選手(DeNA)に通じるものがありました。

 私はずっと村上を見ていますが、ほかのスカウトが見て「こいつはすごい」と。その後の会議で(橿渕聡スカウトグループ)デスクが最終的な順位をつけて、それに全員が納得して、この順番(外れ1位が村上)になりました。

 -最終的に外れ1位を村上選手に決めた時期は

 ドラフト会議の1週間ぐらい前。50人ぐらいの指名候補リストの順位づけを終えて、何度もシミュレーションをして…。これも坂井監督から伺った話ですが、縁という意味ではプロの監督で村上のアマ時代を見ているのが(入団年の2018年から2年間ヤクルトを率いた)小川さんだけ。小川さんは(SD時代に)清宮君のいた早実と九州学院の練習試合も見ているんです。早実戦での村上は打席の結果、内容ともに良くなかったんですが、坂井監督は「村上の良い面、悪い面を知っているのは12球団で小川さんだけ。安心してヤクルトさんに預けられる」とおっしゃっていました。

 -松田スカウトが村上選手を初めて見たのは

 1年春の試合でした。打撃に関しては最初から非凡なものがありました。体が大きくてスイングも速い。このまま成長したら本当にどうなるだろう、と。高校1年でなかなかあんな体つきはいませんよ。

 -打球の速さもずぬけていた

 放物線ではありません。スタンドまで入るのに時間がかからない。スイングを見ている間に打球が(スタンドに)入っている(笑)。こすったとか、ちょっとスピンをかけたという打球じゃありません。やっぱりタイプ的には筒香選手とか、ああいうレベルの打者を目指すべきなんでしょう。体形も似ていますし、そういえば新入団会見での報道陣向けのアンケートで目標とする選手に筒香選手の名前を挙げていました。本人は「ヤクルトの選手の方を書いた方がいいですかね?」と気にしていましたが、私は「書きたい選手を正直に書いた方がいいよ」と言いましたね。

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