【ラガーマン記者が読み解くW杯】ゼロからラグビー(12)いざ南アフリカ戦 譲れぬ「一歩」から攻め手を奪え

西日本新聞

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の準々決勝で、日本代表は20日、南アフリカと戦う。南アの戦いはシンプルながらも、「世界最大」とも称される体軀とパワーを徹底的に生かし、世界トップを走るニュージーランド(NZ)をも苦しめてきた。日本としては、まずは目の前の一歩を譲らないことが生命線となる。

日本のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は18日の記者会見で「南アフリカが何をやってくるかは明らかだ。明確でないのは『われわれが相手に何をするのか』。それが楽しみだ」と語り、南アをけん制した。

 南アのフォワード(FW)は平均身長190センチ、体重110キロを超す。まずはスクラムやモール(ボールを持った状態で敵味方が押し合う)で圧力をかけてくる。低く沈み込み、真っ向勝負で押し込む。敵陣深くではトライを狙い、中盤エリアでは塊を故意に崩す相手の反則を誘う。

 1次リーグの4試合でスクラム、モールとも世界の強豪と互角以上に戦った日本は、ここで譲らずに止めたい。モールで押されない一定のめどが立てば、自陣からタッチラインの外に蹴り出し、中盤エリアで南アがボールを投入するラインアウトからモールで攻められても、さほど怖くない。タッチキックで自陣から脱出する選択肢が生まれる。

 南アは思うように塊が押せないとなると、密集周辺でFWの突進を繰り返してくるだろう。スクラムハーフ(9番)やスタンドオフ(10番)からパスを受けたFWが直線的に突っ込んでくる。的は絞りやすいが、それでも防御の出足が遅れると、一歩二歩と後退を余儀なくされる。

 日本としては防御の選手が素早く前に出て、1人目が下半身に、2人目が上半身に仕掛けるダブルタックルで倒す。タックルの後はすぐさま立ち上がり、防御の隙をなくしたい。

 南アは、ここでも前に出られずに攻撃のテンポが落ちると、手詰まりとなる。恐らく密集後方からスクラムハーフ(9番)のデクラーク選手がボールを高く蹴り上げるハイパントを選択するだろう。W杯直前の日本戦で、南アはこのキックを繰り返した。日本はキック処理が安定しているウイング(11番)の福岡堅樹選手の退場もあり、対応に苦慮。そして大敗を喫した。

 この試合後、日本はキック処理を改善。捕球する選手の前方にいる別の選手が後ろに戻りながら、キックを追いかける相手選手のコースに入る動きを徹底した。相手選手の落下地点への到達を遅らせ、捕球しやすい状況をつくっている。

 ハイボールを確保さえすれば、攻撃権が日本に移ることになる。キックしたボールを追う南アのラインは外側がそろい切れていない印象で、日本がパスやランで外に回して攻める好機も生まれそうだ。

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 日本が中盤エリアで攻撃権を手にすれば、原則として素早い連続攻撃を仕掛けるのではないか。相手の攻める時間を奪い、疲れさせる。密集周辺でFWが突進を繰り返して防御を集め、大外にいる快足ウイング(11、14番)の福岡、松島幸太朗両選手にボールを回し、トライを取りたい。

 これに対し、南アの選手は、日本の選手をボールごと抱え上げるようにタックルし、球出しを遅らせてくる。日本としては突進した選手が低く一歩でも二歩でも前進し、2人目の選手がすぐにサポートに入って一緒に押し込むことでボールを早く動かしたい。この攻防が勝敗の分かれ目となる。

 南アは、相手が密集から球出しすると、密集に近い内側の選手より外側の選手が勢いよく間合いを詰める傾向がある。攻撃側を内側に追い込み、複数で抱え込んで動きを止めるのだ。ただ、外側で飛び出す選手と内側の選手との連携が十分ではない印象がある。倒れながらボールをつなぐオフロードパスなどで、内と外の選手の段差が狙えそうだ。

 ただ、この連続攻撃でボールを奪われるようなことがあれば南アの思うつぼ。ジョセフHCは「南アは相手にボールを渡し、FWの防御で相手をつぶして勝機をつくる」とも分析しており、ここでの「ボールを渡す」はハイパントを指すとみられる。高く蹴り上げたボールを捕らせて攻撃権を渡し、倒れた相手からボールをもぎ取るジャッカルで、ノットリリース(倒れてもボールを放さない反則)を誘う。

 日本としては中盤エリアであれば、早くボールを動かしつつ、飛び出してきたた外側の選手の背後に低く蹴り込む機会もうかがうだろう。いったんボールを渡すことにはなるが、ランでの反撃を受けないように防御ラインをそろえて前に出れば敵陣に入れる。

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