【独占手記】ソフトバンク千賀激白 お化けフォーク操れず苦悩も…丸封じまでつながった「新球」

西日本スポーツ

 3年連続日本一の原動力となった千賀滉大投手(26)が本紙に手記を寄せた。3年連続で日本シリーズの開幕投手を務めた第1戦は、7回を3安打1失点とセ界の覇者を圧倒。レギュラーシーズンでは球団76年ぶりとなる無安打無得点試合を達成。自身初の最多奪三振(227個)のタイトルも獲得し、規定投球回到達者では歴代最高の奪三振率11・33もマークした。「エース」の称号に向き合った2019年シーズンを赤裸々に振り返った。

 ポストシーズン10連勝での日本一。最後はみんなスイッチが入っていたし、このチームの強さを改めて感じた。自分も日本シリーズの初戦を3年連続で任せてもらった。その間にしっかり投げていなければ、大事なマウンドには上がれないと思う。素直にうれしい。

 これまでエースと呼ばれることはあまり好きではなかった。その立場から逃げ出したいと思っていたけど、今季はちゃんと受け入れようと決めた。工藤監督に開幕投手を告げられたときに「今までおまえが先輩を見てきたように、後輩はおまえを見ているからな」と言われたからだ。

 気付けば1軍も後輩ばかりになって「次はおまえだよ」と矢面に立たされた感じ。常に人から見られ、模範になることを求められる。本当は一番後ろに隠れておきたいのが僕。周りがエースと言ってくれることは光栄だけど、それ以上に大変なことが待っていることを思い知らされた。

 だから、(斉藤)和巳さん(本紙評論家)や和田さん、摂津さんは本当にすごいと思える。過去の自分に言ってやりたいこともたくさん出てきた。何も考えずに自分のことだけをやりたいようにできていたのは、誰かが矢面に立ってくれていたからだよ、と。

 その意味でもしんどい1年だったし、シーズン中も試行錯誤の連続だった。本当に状態が良かったのは、そんなに力を入れずに161キロが出た開幕戦ぐらい。肉体的な成長に技術が追い付かなかった部分があり、ピッチングの感覚が変わった。それでフォークを思うように操れなくなり、悪い状態の投球が続いた。

 ターニングポイントは交流戦直前の楽天戦。この試合で速いカットボールを使い始めた。これまでの空振りさせる球ではなく、突き刺すイメージ。日本シリーズで丸さんに投げた球がまさにそれ(※1)。「フォークが使えなくても何とかなる」という手応えを得られたのが大きかった。

 8月に3連敗した時には、今季から使い始めたツーシームを消した。ダルビッシュさん(カブス)にも相談して「日本のボールはあまり曲がらない」とアドバイスをもらって決めた。ノーヒットノーラン(※2)をしたロッテ戦は、投げながら感覚が良くなっていった。あの試合はフォークも使えたけど、まさか達成できるとは思わなかった。

 ただ、レギュラーシーズンの8敗という数字は情けないと思うし、楽天に敗れたクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの第1戦は、チームをギリギリの状況にしてしまった。その後の2試合(いずれも勝利投手になったCSの西武戦と日本シリーズの巨人戦)は、どうにか投げられたというのが本音だ。

 僕は野手と投手は違う生き物だと思う。野手は4三振しても5打席目で満塁本塁打を打てばヒーローになれる。投手は大量失点した時点でKO。抑えて当然と打てればOKという差は大きい。僕は野手向きの性格だと思うし、投手から逃げたいというのが根っこの部分にあるけど、何とか「投手という生き物」になれた1年だったかもしれない。

 置かれる立場が変わっても、野球がうまくなりたいという心が原点。野球少年と同じだし、それがなくなると、野球がただの仕事になってしまう。ただ投げるだけではなく、いい選手になりたいと常に考えている。ゴールはないけど、その過程に米国という選択肢が入るのは自然だと思う。

 体力面の課題を克服するため、今季はシーズン中も本格的にトレーニングを継続した。ポストシーズンを含めれば、200イニング(の投球回)をクリアできたのも良かった。今年から書き始めた野球ノートもトレーニングのことが多い。メニューの内容や効果とか。野球に関しては、いいことは一つも書いていない。反省ばかりだった。

 この1年は準備期間のつもりだったが、それでも変化は出ている。本当に楽しみなのは来年。できることなら、常時100マイル(約161キロ)の球をコントロールよく投げて、防御率0点台なども目指したい。そういう高みに向かっていくことが楽しいし、来年の自分にもっと期待してみたい。 (福岡ソフトバンク投手)

 (※1)日本シリーズ第1戦の初回、丸の1打席目で151キロのカットボールを2球続けて投げ込み、遊飛に打ち取る。今シリーズ不振に陥らせるきっかけをつくった投球だった。

 (※2)9月6日のロッテ戦(ヤフオクドーム)で令和初、育成ドラフト出身として初の無安打無得点を達成。球団では南海時代の別所昭(後の毅彦)以来、76年ぶり2人目だった。毎回奪三振での達成も史上初だった。

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