マラソン札幌移転のお粗末すぎる代替案

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、東京五輪・パラリンピック組織委員会、政府の4者協議が1日、都内で開かれ、五輪のマラソン、競歩は暑さをさけるために札幌市で開催することで決着した。唯一、反発していた東京都の小池百合子知事は「同意はできないが、IOCの決定を妨げることはしない。合意なき決定だ」と述べた。

 4者協議、その後の会見で東京五輪調整委員会のジョン・コーツ委員長から謝罪の言葉は一言も出なかった。選手をはじめとした関係各所に混乱を招いたことは明白だったが、「IOCの最優先事項はアスリート」と、一方的に胸を張った。だが、本当に「アスリートファースト」の決定なのか。

 「自分が選手なら絶対、国立競技場にゴールしたい」

 1992年バルセロナ五輪の男子マラソンで銀メダルを獲得した森下広一氏(現トヨタ自動車九州監督)は、ランナーとしての思いを語った。特に、男子マラソンは大会最終日に開催される。メイン会場で優勝のゴールテープを切る姿を思い描いて鍛錬を続けた森下氏は、盛り上がる開催都市を駆け抜け、メイン会場に入った経験を「鳥肌が立った」と振り返る。今回、選手たちはそんな特別な機会を奪われた格好だ。

 IOCからは後日開催の「セレブレーション・マラソン」が提案されたものの、代替案としてはお粗末すぎる。地球温暖化の中、7~8月に限定されている開催時期も見直しの必要性があるにも関わらず、今後の開催時期変更に関してコーツ委員長は明言を避けた。
 
 この「合意なき決定」の後味の悪さを消し去るためには、前代未聞の移転も東京五輪がうたう「遺産(レガシー)」とする必要がある。肥大化を続ける夏季五輪は、1都市限定での開催が難しくなってきている。ならば、札幌でのマラソン・競歩の実施を大都市と地方都市が共存する「複数都市開催」の模範を示す機会にすべきではないか。

 ある陸上関係者は「(毎年恒例の)北海道マラソンを同時開催して、市民ランナーも一緒に走ってはどうか」と提案した。準備期間は短い。それでも選手と人々の記憶に残し、五輪史と開催都市に貴重な「遺産」を残すためには、大胆なアイデアが求められる。

(五輪担当・伊藤瀬里加)

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