ラグビーW杯から教わった、日本人が忘れていたこと

西日本スポーツ

 桜のジャージーで街があふれかえった日本列島。担当記者として、ここまでの盛り上がりは想像していなかった。南アフリカの優勝で幕を閉じたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の人気に火を付けたのは、史上初の8強入りを果たした日本だ。新たな「国民的行事」となったラグビーW杯。なぜここまでファンを増やしたのか。

  大会前に熱っぽく語っていたリーチ・マイケル主将の言葉が頭に浮かぶ。「外国人も日本人も一緒になって結果を出す。ダイバーシティー(多様性)がすごいチームと思ってほしい。これからの日本(社会)はどんどんグローバルになる。いろいろ感じてほしい」

  日本のメンバー31人のうち15人が海外6カ国の出身・国籍。父が元韓国代表の具智元選手はスクラムで雄たけびを上げてチームを鼓舞し、南アフリカ出身のピーター・ラブスカフニ選手はローマ字で覚えた君が代を歌い、母国に立ち向かった。

  海外出身勢の多さを批判する声は広がらなかった。人気競技に比べても厳しい待遇の中、あらゆる犠牲のもとで過酷な練習に耐え、チームのために大柄な選手へのタックルを繰り返す「ワンチーム」。チームや競技の普及に対する献身的な姿が報道を通して伝わったからだろう。一丸となり困難を乗り切る日本の戦いぶりは、人口減で外国人労働者が増えるであろうこれからの日本社会の縮図であり、理想像だ。排他的な空気が漂い始めた社会で、絆やつながりといった日本人が大切にしてきた価値観を見つめ直し、国籍を超えて分かり合える可能性を感じ取ったからこそ共感が広がった。

  試合が終われば敵味方は関係ないというノーサイドの精神。試合後に花道をつくってたたえ合い、日本文化を尊重した外国チームの選手同士が一列になって観客席にお辞儀もした。ラグビー憲章にうたわれた「品位、情熱、結束、規律、尊重」を具現化する姿に、忘れていた何かを思い出して感動した人も多かったはずだ。スポーツの枠を超え、心にレガシー(遺産)を残した歴史的大会だった。(大窪正一)

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