「運」は天に任せてはいけない 試合中つぶやく理由

西日本スポーツ

 東京五輪で日本選手団の先陣を切って登場するソフトボール女子日本代表の宇津木麗華監督は、北京五輪以来となる金メダル獲得の期待を担う中で令和を迎えた。

 生まれ故郷の中国から昭和に来日。選手や指導者として平成を駆けた。一度は五輪から除外された期間の苦しさを知るからこそ、選手には日本代表として五輪で戦う意味や価値を問い続ける。東京五輪を「競技人生の集大成」と言い切る宇津木監督が思いを語った。

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 勝負の世界に身を置いて、つくづく大事だと感じる言葉が二つある。「縁」と「運」-。「縁」という意味では、やはり上野由岐子を挙げたい。福岡市の九州女子高(現福岡大若葉高)から実業団の道に進む際、彼女の選択肢にあったのが、群馬県高崎市の日立高崎(現ビックカメラ高崎)と横浜市の日立ソフトウェア(現日立)。選んだのは私が当時現役選手で所属していた日立高崎だった。

 上野はそれぞれの練習に参加し、最終的には母親を通じて加入の意向を伝えてきた。何が決め手だったのか分からない。言えるのは、超高校級投手と騒がれていた上野を〝お客さん〟扱いしなかったことぐらい。彼女の目から純粋さが伝わってきたし、自然体で受け入れた方がいいと考えた。

 「運」の有無も勝利への必須要素。運は自分の力では制御できないと思われがちだけれど、呼び寄せる力は個々の気持ちの持ちようではないだろうか。プロスポーツで大成するアスリートはもちろん「運がいいよね」と言われる人は往々にしてポジティブな思考の持ち主が多い気がする。

 私自身は、運が強いと思っている。指導者として行動のベースにしているのが「勝負に出る」ことだ。目先の試合をしゃかりきになって勝ちにいく、という意味ではない。常に考え、目標に向かって研究や対策など具体的なアプローチをすること。打順の考案から、選手起用、サインプレーまで多岐にわたる試合の采配において、勝負に出る意識を欠いたことはない。運は自分でつかむのであって、天に任せてはいけない。

 日本リーグ女子が開催されている春と秋の期間、代表選手は所属チームに戻る。その間、代表活動は休止となるため、今秋も可能な限り、リーグ戦の試合会場に足を運んだ。バックネット裏の記者席などで一緒になったメディアの方ならお気付きかもしれない。私は試合に目を凝らしながら、いつも「ああだ」「こうだ」と、ぶつぶつ独り言を言っている。つぶやく相手はもう一人の自分。当たるか、外れるかの確認で「ここはドロップかな」とか「インコースに投げてくるよ」とか、あえて口にしている。自分の試合に置き換えて、展開を読むことで仮想の指揮を執っているのだ。

 結果オーライにならないように、必ず1球ごとに声に出す。恥ずかしいと思ったことはない。東京五輪の代表選手は計15人。つまり、私一人の脳で十五役をこなさなければいけない。観察する。口にする。脳にインプットさせる。この三つの動作を繰り返し、来夏の予行演習をしている。予想と結果が合致すれば、選手への助言にも説得力を持たせられる。自信にもなる。当たらなくても「なるほど、逆にこういうやり方もあるんだ」と作戦の引き出しや、選手が困ったり迷ったりしたときの処方箋にする。旧態依然の取り組みでは進歩がない。細かな更新や修正を行うアップデートはどんな世界でも不可欠だ。 (ソフトボール女子日本代表監督)

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 宇津木 麗華(うつぎ・れいか)1963年6月1日生まれ。中国・北京市出身。元中国代表。88年来日、95年日本国籍取得。現役時代は内野手で日本代表の主砲、主将として活躍し、シドニー五輪銀メダル、アテネ五輪銅メダル。2003年に日立&ルネサス高崎(現ビックカメラ高崎)の選手兼任監督就任。04年に現役引退後は11年から15年まで代表監督を務め、12、14年の世界選手権優勝。16年11月、再び代表監督就任。群馬女子短大を聴講生として卒業。右投げ左打ち。

 

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