ソフトバンク内川19年目の初体験 高鳴る鼓動「どうするんだ」

西日本スポーツ 鎌田 真一郎

 ◆ソフトバンク2019プレーバック 内川聖一内野手の「分岐点」

 現役最多2171安打を誇るヒットメーカーが今シーズンを振り返ると、とっさに一つのシーンがよみがえった。「ノーヒットノーランの試合の9回」。自身の打席ではない。9月6日のロッテ戦(ヤフオクドーム)、千賀が球団史上76年ぶりの快挙までアウト三つに迫った時の守備だ。

 リードは2点。先頭の田村、代打岡への連続与四球で無死一、二塁のピンチを迎えた。快挙以前に勝敗を左右する場面。特有の緊張感は内川にとっても初の経験だ。高鳴る鼓動を感じながら、頭の中であらゆるケースを想定した。

 「バントをされたら1死二、三塁。その時は前進守備なのか? でもヒットを打たれたら同点になる。じゃあ、1点覚悟の守りになるのか? それだとノーヒットノーランがなくなる…どうするんだ」

 さまざまに展開を読みながら内川が構え、千賀が初球を投げた。左打者の鈴木は強攻。ファウルになったが、スイングの軌道から走者を進めるため引っ張ろうとしているのは明らかだった。「こっちにくる」。そう確信すると一度、心を落ち着けた。「二、三塁にはしたくない。二塁で一つアウトを取らないと」。捕球してから、二塁へ送球するイメージを描いた。

 2球目、限りなく想像に近い打球が飛んでくる。引っ張ったゴロは一、二塁間へ。「タイミングの合ったバウンドできっちりきた」。捕球すると、そのまま二塁へ送球。カバーに入った遊撃手の今宮が捕球し、確実にアウトを一つ奪った。「あれで暴投が出ていたら満塁になっていた。アウトが取れたときは、ホッとした」。かつて送球難に悩まされたこともある背番号1は胸をなで下ろした。

 1死一、三塁となり打者に集中した千賀は、中村奨を二飛、最後は井上を空振り三振に仕留めノーヒットノーランを達成した。内川もマウンドに駆け寄る。歴史に名を刻んだ右腕の頭をぽんとたたいた。

 「自分の記録なら失敗しても仕方ないと思える。でも、人の記録を自分のミスで終わらせるわけにいかなかった」。シーズン守備率10割で初めてゴールデングラブ賞を手にした男にとって、プロ19年目で訪れた分岐点ともいえるベストプレーだった。 (鎌田真一郎)

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