「チーム愛」とともにゴール目指し続けた龍谷の背番号10 J1鳥栖・豊田に励まされ

西日本スポーツ 西口 憲一

 ◆全国高校サッカー選手権1回戦 龍谷1-3専大北上(31日・NACK5スタジアム大宮)

 2大会連続出場の龍谷(佐賀)が初戦で散った。風下の前半に3失点。得点は後半27分にMF石橋啓士(2年)が決めたゴールにとどまり、初陣1勝を挙げた前回大会に続く選手権勝利はならなかった。1、2年生8人がスタメンを占める中、MF鵜木亮良(3年)は前チームから残った唯一のレギュラー。劣勢の展開を打開しようと、憧れのスターから授かった「チーム愛」を胸に最後の瞬間までゴールを目指し続けた。

 新チームがスタートしてから、最上級生となった鵜木は途中まで主将を務めていた。センターバックとして出場した前回大会。2年生ながら10人の3年生に交じってスタメンでピッチに立った。実力的にも文句のない人選ながら、肝心の結果が伴わなかった。新人戦は3位。全国総体予選は初戦で敗れた。「前のチームではできたことがなかなかできず、それを周囲の皆に当たってしまって…。チームをうまくまとめられず、僕の力量では無理だと…」。悩み抜いた末に、主将を同級生のDF柴田陸玖に託し、前線で得点力をアップさせようとMFへの配置転換を太田恵介監督(40)に申し出た。ただ勝たせたい一心だった。

 「勝たせたい」-。あのときもそうだった。小学4年からサガン鳥栖U-12でプレーし、中学生になってからも下部組織で技術を磨いた。トップチームへの憧れは当然のように芽生える。中学時代は鳥栖の試合でボールボーイも務めた。ホームでの浦和レッズ戦。鳥栖を押し込んでいた浦和がコーナーキックの好機を得た。蹴る場所の近くに偶然いて、ボールを手にした。本来なら所定の位置に置くか、浦和の選手に手渡すべきところ、鵜木少年はどちらもすることなく、ボールを少しだけ転がした。そうすることで鳥栖の選手が守備のため自陣に戻ってくる時間を稼ごうとした。疲労を隠せない選手たちを少しでも休ませたかった。浦和のサポーターからはブーイングが飛び、鵜木少年は身をかたくした。聞こえてくる怒声が怖かった。良くないことだと分かっていた。それでも大好きな鳥栖を何とかして勝たせたかった。力になりたかった。

 落ち込みかけた鵜木少年を救ったのは、鳥栖のエースストライカー豊田陽平の優しさだった。試合後、鵜木少年の姿を探し出した豊田は「君のチーム愛は分かっているからね」とほほ笑み、自分のスパイクをプレゼントした。「あのとき、かなりたたかれましたが、豊田さんの心遣いが本当に嬉しかったんです」。本能的に取ってしまった行動とはいえ、自分のことをちゃんと見てくれていた。気持ちが通じていた。豊田の励ましの言葉は今も忘れられない“宝物”だという。

 2大会連続の勝利を狙ったこの日、龍谷のシュート数は7本。左ハーフで出場した鵜木のシュートは2本にとどまった。専大北上に先制され、畳み掛けられ、大舞台で浮足立つ後輩たちを落ち着かせようと自らの得点を反撃ののろしにしたかった。後半の早い時間帯。右クロスに頭で合わせたが、相手GKの好守に阻まれた。「キーパーがニアに寄ってきたのは分かっていましたが、そのまま(ニアで)いけるかなと。(逆の)ファーに流し込んでいれば確実でした」。気持ちを切り替え、得意のボールキープやスルーパスなどで左サイドから何度も好機を演出した。「10番を背負いながら、チームを勝利に導くことはできませんでした。でも、やれることはやったので悔いはありません」と言い切った後、少しだけ笑みを浮かべた。「県で1チームしか出られない選手権のピッチに2年続けて立たせていただいた。人生の大切な財産になります」。将来は体育教師になるという夢を持っており、大学進学を希望。次なる“ゴール”へ向かうため、顔を上げて高校最後のピッチに別れを告げた。 (西口憲一)

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