「箱根に憧れない」長距離界の新星は旭化成伝統のたたき上げ

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 正月は駅伝がもっとも盛り上がる季節。元日に行われた全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)は、旭化成が4連覇を達成し、歴代最多を更新する25度目の優勝を飾った。スター選手がそろうチームの中で存在感が際立ったのが、入社2年目の小野知大だった。「箱根駅伝に憧れはない」と、高卒で実業団の世界に飛び込んだ20歳。多くの名ランナーを輩出した名門に現れた新星が“伝統”を受け継ぎ、世界を目指す。

 ニューイヤー駅伝6区で衝撃を与えた。初出場の小野は順位を2位からトップに浮上した上に、区間新記録をマーク。従来の区間記録を36秒も更新した。「すごく緊張していた。自分でもびっくり」。初々しい感想とは裏腹に、美しいフォームと堂々たるレース内容だった。

 大分市出身。野球少年だった小学生の頃から長距離走が得意だった。同市の坂ノ市中の陸上部監督に素質を見込まれて陸上部に入部。3年時には全国中学駅伝で30人抜きを達成した。大分・鶴崎工高では1年時にアジア・ユース選手権男子3000メートルで2位に入った。

 高校卒業後は「箱根にはそこまで憧れがなかった。最終的な目標がマラソンで、マラソンと言えば旭化成」。大学には進学せず、誘いを受けた旭化成に入社。高校3年の夏に腰を疲労骨折した影響もあり、入社1年目の昨季は今よりも体重は約10キロ重かった。体を絞り、少しずつ走行距離を伸ばした今季は、先輩の練習にも付いていけるように。昨年12月の甲佐10マイルで好走し、層の厚いチームで初の駅伝メンバー入りを勝ち取った。

 過去に日体大出身の谷口浩美氏が在籍し、近年は箱根駅伝のスターが集結する旭化成ながら、伝統的に高卒の選手を鍛え上げるスタイルが主流。双子の宗兄弟や、1992年バルセロナ五輪男子マラソン銀メダリストの森下広一氏が典型例だ。西政幸監督が「誰よりも真面目。取り組む姿勢が素晴らしい」と評する小野も、歴代五輪ランナーが歩んだ道をたどろうとしている。

 2024年パリ五輪の出場が目標。「狙っていくべきところ。旭化成の次を担える選手になりたい」と将来のエースを目指す。両親から「大勢の人に知ってもらえるように」という願いを込めて「知大(ちひろ)」と名付けられた。「名前を覚えてもらうことも目標にしていたので、覚えてもらえたらうれしい」。新春の箱根路を快走する同世代の選手たちに負けじと、夢に向かって成長を続ける。(伊藤瀬里加)

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