ソフトバンク5位柳町を見守った「じいちゃん」天国に届ける快音を

西日本スポーツ

 ソフトバンク2020新人紹介 ドラフト5位・柳町達(下)

 4年連続日本一を目指すソフトバンクに12人(支配下5人、育成7人)のルーキーが入団した。球団では41年ぶりに外野手の1位となった佐藤直樹をはじめ、支配下選手は社会人、大学生の即戦力候補が4人。1年目の活躍も期待される顔ぶれとなった新人たちの横顔を紹介する。(文中敬称略)

(上)からつづく

 慶応高に進んだ柳町は15歳で茨城の実家を離れた。自分が強く希望した道だ。「しっかり頑張らないと」。1年夏につかんだレギュラーの座は最後まで手放さなかった。しかし神奈川は全国屈指の激戦区。目指していた甲子園には届かなかった。それでも、もう一つの目標があった。野球部で教えられた「早慶戦」の重み。「活躍したい」の思いを胸に慶大へ進んだ。

 巧みに広角へ打ち分ける打力は東京六大学リーグでも通用した。1年春で定位置を奪取しベストナイン。伝統の一戦でもその名を刻んだ。2年春の早大戦、甘いスライダーを振り抜き右翼席へ決勝のグランドスラム。「一番の思い出です」。今でも感触を忘れない珠玉の一打だった。

 思わぬ形でソフトバンクとの縁が紡がれたのは2年時の練習試合だ。2018年秋のドラフト4位で指名することになるJR東日本の板東湧梧を視察するために訪れていたスカウトの福山は、その右腕から右翼席へ本塁打を放つ姿に目を奪われた。「直球を簡単に打った」。ここから熱視線を注ぎ始めることになる。

 「野球をやめたいと思ったことはない」。そう言い切る柳町は慶大でも順調にキャリアを重ねた。そんな姿を常にあたたかく見守る存在の一人に祖父の幸一がいた。自宅の庭にシーソーなどの遊具を手作りし、体を動かす楽しさを教えてくれた。

 幸一は神宮球場に何度も足を運び、テレビ中継も欠かさずチェックして孫の活躍を喜んだ。偶然にも誕生日は同じ4月20日。柳町が「じいちゃんがいない人生は考えられない」と言うほど2人の間には強い結びつきがあった。昨年12月、柳町は故障したスマートフォンの修理のため帰省。いつものように野球の話をして笑い合ったが、ほどなくして幸一が急逝した。

 葬儀でほおを伝う涙。実感が湧かない。日増しに涙の粒は大きくなったが、同時にある思いも増していった。自分はプロにいく-。それは、幸一の強い願いでもあった。

 慶大では高橋由伸以来となる1年春からのリーグ戦全試合出場を達成。通算100安打も成し遂げてプロへの道を切り開いた。自身と祖父の願いを成就させ最終的な安打数は113。プロでは首位打者を目標に掲げる。「じいちゃんへの思いもモチベーションの一つ」。天国に届く快音をプロでも重ねる。 (山田孝人)

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