柔道井上監督が「悔やんだ」リオの体験 東京で金メダル量産へ鍵は

西日本スポーツ 末継 智章

 柔道男子日本代表の井上康生監督(41)=宮崎市出身=が、24日であと半年となった東京五輪開幕に向けた思いを本紙の単独インタビューで語った。アテネ五輪で2連覇を逃した自身の体験や監督として臨んだリオデジャネイロ五輪の経験から、金メダル量産を実現するための鍵として「リラックス」を挙げ、代表チームのまとめ役にはリオデジャネイロ五輪銅メダルの羽賀龍之介(旭化成)=宮崎県延岡市出身=と海老沼匡(パーク24)を指名したことを明かした。 (聞き手・構成=末継智章)

 -東京五輪をどう捉えているか。

 「56年ぶりの自国開催。重圧がないというのはありえない世界。だからこそ緊張を受け止めつつ、平常心を保った上で闘っていけるか。一生に一度あるかないかの東京五輪に携われるというポジティブな考えを持ちながら闘いたい」

 -井上監督も選手として2大会連続で五輪に出場した。

 「シドニーで金を取り、アテネは自分が一番輝ける場所だと位置づけて闘ったが、気持ちの面で非常に難しさを感じた。切り替えとか息抜きがあまり上手ではない選手だったので。その点は非常に気をつけながら選手に指導している」

 -リオデジャネイロ五輪では全階級でメダルを獲得した一方、優勝候補だった81キロ級の永瀬貴規が銅メダルだった。

 「80パーセントの力を発揮できたら彼は優勝できたのではないか。そこまでも引き上げられなかったことを悔やんだ。真面目で勤勉な選手をどうしたら力を出させてあげられるかと考える中で、いかにリラックスできた上で思い切って闘っていけるようにサポートできるかが重要だと思った」

 -1月のハワイ合宿のテーマは緊張と緩和。

 「永瀬の経験をもとに発想したのは間違いない。五輪になると嫌でも緊張し、意識が高くなる。集中すべきことは集中しつつ、(気を)抜けるところは抜きながら、最高のパフォーマンスを出せるかという意味で取り組んだ」

 -ハワイ合宿でのカヌー体験をはじめ、柔道以外のトレーニングを課すなど多角的にアプローチしている。

 「能力を伸ばしていく方法として一つのことだけにこだわらず、いろんな世界を見ることによって彼らの能力を引き出していけるのではないか。時代も変化する中で、彼らにとって何が一番いいかを考えた上で取り入れている」

感動与えたい

 -代表争いでは厳しい立場にある海老沼と羽賀も招集した。

 「2人は経験を積んでいるベテランで、選手の立場を理解している。われわれ(指導陣)と選手両面の意図を伝えてもらいたいと思い、合宿に招集した。私の気持ちは直接伝え、『分かりました』と返事をいただいた。この先も彼らの力を借りながら東京に進む」

 -2人とも自らの五輪代表も諦めていない。

 「やるからにはとことんやれと言っている。全力で取り組んでほしい」

 -東京五輪では73キロ級の大野将平に2連覇の期待がかかる。

 「大野は切り替えや息抜きを上手にやっているのではないか。必要な事項があれば伝えるが、私の体験が彼に当てはまらないことも多々ある。自分の経験値だけでは物事を判断したくないと思っている」

 -全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長が日本オリンピック委員会(JOC)の会長。日本は金メダル30個を目指し、柔道への期待も大きい。

 「山下会長からは『思い切ってやれ』とおっしゃっていただいた。柔道が活躍することを心から願っている部分はあると思うけど、極力重圧をかけないという配慮を感じる。一方で個人的には先生に、柔道が活躍してみんなが喜んでいる姿を見てもらいたい思いは強い」

 -東京五輪で見せたい日本の柔道とは。

 「選手は時間を犠牲にし、つらいことを耐え抜いて努力を重ねてきた。思い切って闘ってもらいたいし、その道のりがドラマとなって人々に夢や感動、希望を与えると思っている」

 -ハワイでの柔道教室では、現地の多くの子どもが目を輝かせていた。

 「これからも常に日本柔道が尊敬のまなざしを送られる立場でありたい。選手にとっても私にとっても五輪は一つの節目になるが、柔道家としての闘いは五輪後も続く。どういう形で生きなければいけないのかを考えるのが究極の“道”であり、それを求めるからこそ成長できる。その心を忘れず取り組みたい」

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