女に生まれ、ソフト代表監督を務める私が、心に縫い付けた言葉

西日本スポーツ

 東京五輪で日本選手団の先陣を切って登場するソフトボール女子日本代表の宇津木麗華監督は、北京五輪以来となる金メダル獲得の期待を担う中で令和を迎えた。

 生まれ故郷の中国から昭和に来日。選手や指導者として平成を駆けた。一度は五輪から除外された期間の苦しさを知るからこそ、選手には日本代表として五輪で戦う意味や価値を問い続ける。東京五輪を「競技人生の集大成」と言い切る宇津木監督が思いを語った。

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 言葉で多くを表現するのは難しい。どちらかといえば不得手だと自覚している。それでもソフトボールを愛する人間としてのアイデンティティーは持っているつもりだ。今の思いを漢字で表すなら「努」に尽きる。好きな言葉の「努力」を構成し、「女」「又」「力」の三つの要素が入っている。待ったなしの戦いを控え、「初心忘るべからず」と心に縫い付けた。

 「女」は男性のような上半身の強さがなく、筋力も劣るだけに「又=股」つまり下半身を使ってバランスを取ることで「力」を最大限発揮できる。女性に生まれて出合い、打ち込んできたソフトボールを最も言い表している文字が「努」だと思う。打撃だけでなく、守備にも当てはまる。一歩目の踏み出しは特に重要。三塁手だった現役時代、グラブではなく、足でボールを捕る意識でプレーした。

 骨身を惜しまずに全力を尽くして事に当たることが一般的な「努力」の意味だ。生まれ育った中国でも語意は同じながら、私は「努力」と「学ぶ」とワンセットで考える。「死ぬまで勉強して努力します」なんて口にしたら、今の時代にはそぐわないかもしれないけれど、一生学ぶ気持ちだけは持ち続けたい。

 ソフトボールの「ソフト」は柔軟の意だと解釈している。上野由岐子(ビックカメラ高崎)はモーションに入るとき、一回息を吐くことで重心をぐっと落としてから投げる。体の使い方にも遊びや余裕は必要。考え方の幅にもつながる。硬直した、張り詰めた思考で好プレーは望めない。

 選手に「ここを乗り越えてほしい」と感じたとき、よく「滑り台」の例え話をする。指導者は対戦相手になったつもりで、滑り台を登ってくる選手の上から「油」を流したり「水」をかけたりしている。味方であっても厳しい練習を課す。宿題も与える。相手は必ず弱点を突いてくるからだ。チームを勝利に導き、選手を守ることが私の仕事。守ることは過保護にすることではない。油に滑って流されそうなところを踏ん張り、歯を食いしばって台の上まで登り切る選手を私は待っている。ある意味、教えながら一緒に学んでいる。

 嫌いな言葉を一つ挙げるなら「~だろう」だ。昨年、日本リーグ女子のある試合を視察した。試合前から「たぶん勝てるだろう」と高をくくっていたように映るチームがあった。勝つための心の準備が足りないなと感じた。案の定、そのチームは格下に敗れた。

 私は自分たちと同等、あるいは強い相手は「徹底的にやっつけなさい」と指示してきた。相手がエースではなく新人投手でも容赦はしない。セーフティーリードの展開でも「100点取るつもりで臨みなさい」と口を酸っぱくしてきた。何度戦っても勝てないと、相手の心に植え付けることが大事だからだ。希望的観測や根拠のない自信ほど危険なものはない。「~だろう」は勝利を揺るがす大敵だと、改めて肝に銘じたい。

(ソフトボール女子日本代表監督)

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 宇津木 麗華(うつぎ・れいか)1963年6月1日生まれ。中国・北京市出身。元中国代表。88年来日、95年日本国籍取得。現役時代は内野手で日本代表の主砲、主将として活躍し、シドニー五輪銀メダル、アテネ五輪銅メダル。2003年に日立&ルネサス高崎(現ビックカメラ高崎)の選手兼任監督就任。04年に現役引退後は11年から15年まで代表監督を務め、12、14年の世界選手権優勝。16年11月、再び代表監督就任。群馬女子短大を聴講生として卒業。右投げ左打ち。

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