ソフトバンク和田が39歳で現役を続けられる理由「つくり上げた作品が壊れてしまわないために」

西日本スポーツ 鎌田 真一郎

 ソフトバンクの選手に直撃する西日本スポーツの企画「キーマンに聞く」春季キャンプ編第2弾は和田毅投手だ。単独では初となる著書「だから僕は練習する 天才たちに近づくための挑戦」(ダイヤモンド社)を出版。21日で39歳になるチーム最年長の18年目左腕が、これまでに培ってきた「練習論」やかつてバッテリーを組んだ城島健司球団会長付特別アドバイザーへの思い、自身の現状などについて語った。(取材・構成=鎌田真一郎)

-練習がキーワードの著書となったが、春季キャンプは1年の中でも多くの練習に取り組む1カ月だ。

 シーズン終盤の8、9、10月に良い状態でいることを考えて逆算すると、今の時期に追い込まないといけない。体がきつくても、今やっておかないと後が大変。2月は投げることがメインになるけど、走りながらトレーニングもして疲れた中で過ごし、ここから疲労を抜きながら状態を上げていく。

 -今キャンプでは城島アドバイザーが注目を集めた。かつてバッテリーを組んでいた城島アドバイザーについては、本の中でも触れている

 1年目からバッテリーを組んで、プロ野球の「いろは」を教えてもらった方。最初に「遠慮せず、どんどんサインに首を振れ」と言ってもらえた。「首を振ることで、おまえの配球に対する考えが分かる。だから、俺に気を使う必要はない。本当に大事な場面で、俺は頑としてサインを変えないから。その時は、俺を信じて投げてくれ」と。世間では豪快なイメージがあるかもしれないけど、城島さんはすごく繊細。語弊を恐れずに言うと、典型的な(血液型)A型だと思う。細かい所や、ほんの小さな変化にも気付いてもらえる。技術的なところだけでなく私生活でも、そう。このキャンプ中にも食事やゴルフにも一緒に行って、楽しい時間を過ごさせてもらった。

-著書では野球の練習方法を細かく紹介しているわけではない

 野球論ではなく練習論。ビジネスの方でも、子どもでも、いろいろな方に読んでもらえるとうれしい。プロ野球の世界は、天才肌の人がほとんどだけど、僕は違う。身体能力が高いわけでもないし、体も大きくない。プロ野球の世界では少数派の部類。それでも、ここまでプロ野球を続けてこられた。その中で感じたことや、考えたことをつづっている。野球でなくても、それぞれの分野に置き換えて読んでもらえれば。

-浜田高(島根)2年夏、3年夏に甲子園に出場し、早大では東京六大学記録の通算476奪三振をマークして自由獲得枠でプロ入り。エリートのイメージがある

 僕自身にはエリートという意識は全くない。甲子園には行けたけど、大学1年の新人戦で初めて神宮で投げた時の球速は129キロ。恥ずかしくて、これでは4年間で神宮のマウンドで投げるチャンスはないなと思った。それで、肩が壊れてもいいと思い切って投球フォームを変えた。この時に動作解析や運動力学に基づいてフォームを修正していくと、2カ月後には球速が140キロを超えるようになった。この成功体験が大きかった。

-考えて練習するきっかけになった

 そう。でも、球速が出るようになってもスタミナが続かない。じゃあ、次は1試合投げきるには、1年間戦うためには、と考えて練習に取り組むようになった。プロを意識したのは、大学2年の冬ごろ。大学4年の時は、プロ1年目で1年間ローテーションを守って投げることを想定しながら練習していた。何千時間、何万時間練習したとしても、それが何のための練習なのか目的を明確にすることが大事だと思う。

-2年前の春季キャンプでは左肩を故障し、苦しんだ。練習の成果を実感できなかった期間だったはずだ。

 もちろん、肩の痛みと戦っていた時は実感はできなかったが、自分が今までしてきた練習が無意味だったとは思っていない。もっと良い練習、トレーニング方法はないかなとは考えたけど。ただ、今こうして投げられるようになったのは周りの支えのおかげ。自分一人では絶対克服することは無理だったと言い切れる。本当に感謝してもしきれない。

-いわゆる「松坂世代」のプロ野球選手も、現役は5人になった

 同世代にすごい選手がたくさんいたことで「自分は人より優れていない」と素直に受け入れられた。天才肌の人は感覚的にできてしまうことも多い。でも、僕は不器用。何事もまず理解することに時間もかかるし、表面的に分かりたくないという性格もある。自分の投球フォームもつくり上げた“作品”。それが壊れてしまわないためにも、恐怖と戦いながら練習をしている。

-普段から本を読む機会は多いのか

 時間があると、よく書店に行く。何をというわけでもなく、目に入った物を手に取ってみる。それが小説の時もあるし、自己啓発本の時もある。もちろん、野球関連のものも。野村克也さんの本はよく読んだ。ジャンルは関係なく、堀江貴文さんや、羽生善治さんの本も読んだ。将棋の世界にも、野球に通じるものがあるのではないかと。やっぱり、今は自分の仕事へのヒントを探しているのかもしれない。

-著書を読む方へのメッセージは

 「これが正解です」ということは、一つも書いていない。自分の体験談であって、手に取ってどう感じるかは自由。「なるほどな」で終わるかもしれないし、「へー、そうなのか」と思うかもしれないし「いや、違うだろ」と思われるかもしれない。でも、それで良い。そこから、また議論が生まれるかもしれない。ただ、読んだ方にとって、何かのきっかけになったり、考え方の選択肢の一つに加えてもらえたりしたらいいなと思う。

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