完敗の井上に雑草魂、新聞配達から続く道 1万メートルで東京五輪出場も

西日本スポーツ 末継 智章

 東京五輪の男子代表選考会の一つ、東京マラソンは1日、東京都庁前から東京駅前のコースで行われた。2018年アジア大会王者の井上大仁(MHPS)は、先頭集団で日本記録を上回るペースで飛ばして前半の主役となったが失速し、2時間9分34秒の26位に終わった。

 大迫がゴールしてから約4分後。マラソンでの東京五輪が消滅しても、井上の表情は晴れやかだった。「やりたいことも、やれることもやった。大迫選手は代表にふさわしく、半端ない」。ナイキ社の「厚底」新モデルで開始直後から先頭集団のハイペースに食らいつき、32キロすぎまで日本人トップ。最後は失速したが「雑草魂」を具現化したレースだった。

 昨秋の代表選考会は大一番の重圧にのまれて完走者中最下位の27位。教訓とし、今回は世界に挑む“原点”に回帰した。元々運動音痴。陸上を始めた中学1年から毎朝、父親の正文さんの新聞配達を手伝い、長崎県諫早市内の坂道を走って脚力を鍛える中で求められたのが、この日に示した真っ向勝負だ。さらに長崎・鎮西学院高時代に入江初舟監督から「自分の思い描いた分しか目標は達成できない」と教わってから「世界レベルの選手になる」と抱き続けてきた。

 1月のニュージーランド合宿中、趣味の折り紙で象を折った際に「2・04・00!!」と従来の日本記録をはるかに上回る、世界基準の目標タイムを記した。20キロ走の練習を59分台で駆けるなど、2時間4分台を想定した練習を積んできた。中間点までは想定すら上回る2時間3分台ペース。裏打ちされた自信があればこその果敢な飛び出しだった。

 高校では実績を残せず、大迫や設楽は雑誌で見る憧れの存在だったが、約10年かけて2人を脅かすランナーにまで成長した。この日は30キロすぎで「足が棒のようになった」と失速したが、日本でめったに体感できないハイペースは「大きな財産になる」。得がたい収穫を次への糧にする。

 5月に国立競技場で開かれる1万メートルの日本選手権に出場できる資格があり、チームは井上の参戦を検討中。井上自身は「今後のことはまだ考えられない」と明言を避けたが、トラックで東京五輪の切符を手にする可能性はゼロではない。再び東京五輪を目指すか4年後のパリ五輪になるか。「また何かしら目標を見つけて挑戦することには変わらない」と井上。少なくとも世界レベルの選手になるという挑戦のゴールはここではない。(末継智章)

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