一山「夢みたい」圧巻V五輪へ「鬼鬼メニュー」こなしたおしゃれランナー

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

■名古屋ウィメンズマラソン

 ニューヒロインが最後の1枠を勝ち取った。東京五輪女子代表選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソンは8日、ナゴヤドーム発着で行われ、一山麻緒(ワコール)=鹿児島県出水市出身=が日本歴代4位の2時間20分29秒で優勝した。1月の大阪国際を制した松田瑞生(ダイハツ)の2時間21分47秒を切って条件を満たし、九州出身では1988年ソウル大会の荒木久美(福岡県小郡市出身)以来となる五輪代表に決定。昨年3月のマラソンデビューから1年で4度目のレースに臨んで勝ったタフな22歳が、女子で4大会ぶりのメダルに挑む。(スタート時=雨、気温9・1度、湿度88%、北の風0・2メートル)

■涙「夢みたい」

 降りしきる雨も、一山はプラスに捉えていた。「こういう日に五輪を決めることができたら、格好いいな」。高速ペースにも余裕を持って対応。「ジョグ感覚で」と考えていた30キロを走り終えてからが真骨頂だった。ペースメーカーが外れると、待ちわびていたように一気にギアを上げた。

 5キロのラップで25~30キロは17分1秒だったのを、30~35キロはレース全体で最速の16分14秒でカバー。海外招待選手も置き去りにして一人旅に突入した。前半より後半のハーフが23秒も速く、内容も申し分ない圧巻のV。「夢みたい…」。ゴールして真っ先に永山忠幸監督(60)の胸に飛び込むと、涙が止まらなかった。

 鹿児島・出水中央高で目立った実績はなかった。無名の原石を磨いたのが熊本県人吉市出身、福岡大大濠高卒の永山監督だ。ワコールを率い福士加代子とトラック、マラソンで4度の五輪を経験。「福士を見た時と同じように一山は練習でのポカがない。福士は(マラソンの)遅いペースでストレスを感じるが、彼女はそれがなくよりロード向き」と評する。一山が2016年に入社した時に「5回目の五輪はマラソンで、君で行く」と告げた。

 初マラソンはこの日の名古屋よりコンディションの悪い昨年3月の東京で、2時間24分33秒。新星登場と期待されながら以降は順調ではなかった。9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は6位。その前から、永山監督と意思疎通がうまくいかないこともあったという。

 40近い年齢差のある教え子と向き合い、永山監督は「今どきの子。彼女の好きな物を好きになる」と指導法を変えた。これまで選手には食事や服装を厳しく管理してきたが、ファッションや食べ物にこだわりを持つ一山の意思を尊重。派手なピアスやネイルを容認する一方、練習に対する自身の考えを明確に伝えた。

 今大会へ向けても一山の希望通り、米国アルバカーキで高地合宿を実施。そこで永山監督が課したのが一山の言う「鬼鬼メニュー」だ。かつて福士が取り組んだ1・2倍の強度で、1キロ3分20秒の配分を心身にたたき込んだ。5キロ×8本の練習は30キロ以降のペース変化を想定。「監督のメニューをこなせたら大丈夫」と自信を持ってスタートラインに立ち、描いた通りの走りでフィニッシュした。

 ナイキ社が国内では1日から発売している新型厚底シューズを履き日本歴代4位、国内レースでは03年大阪の野口みずきの記録を破る日本選手最高タイム。五輪ラスト切符をつかみ、日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーに「日本記録を狙う1番手」と絶賛されたシンデレラは「日本代表として格好いい走りを」と誓う。8月8日、札幌の地で披露するのは史上最高に“格好いい”姿だ。 (伊藤瀬里加)

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