大病乗り越えた王監督、復帰戦で執念采配 勝負手いきなり連発/復刻

西日本スポーツ 西口 憲一

 ◆日めくりソフトバンク 誕生15周年

 ソフトバンク球団は今年15周年。球団がソフトバンクとなった2005年からの出来事を、過去の西日本スポーツ掲載記事で振り返ります。

 2007年3月24日は胃がんを克服して現場復帰を果たした王監督が、復帰戦でいきなり「らしさ」全開の振る舞いを見せました(年齢などは当時)。

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 王貞治監督(66)の262日ぶり“復帰戦”は黒星に終わった。パ・リーグの2007年シーズンが開幕。王監督は胃の全摘出手術のために戦列を離れた昨年7月5日の西武戦以来となる公式戦の指揮に臨んだ。9回に守備が乱れて敗れたが、スクイズを仕掛け、捕手を素早く交代させ、小刻みにリリーフ陣を送り出すなど勝利への執念は昨年とまったく同じ。試合後はナインを集め「まだ144分の1だ」と鼓舞した。

 喜怒哀楽が凝縮された開幕1敗を、大きな心で受け止めた。「一方的な試合をしたかったが、仕方がない」。格下のオリックスに喫した逆転負け。圧勝発進を信じ、本拠地には2005年に実数発表になって以来、最多の3万5166人が詰め掛けた。行き場のないため息が充満する中、試合後の王監督は真っ先にナインを招集。「144分の1だととらえよう。良くても悪くても、今日は今日だ」。時間にして約1分半、諭すような口調で訴えた。

 エース斉藤和が立ち上がりから波に乗れず、救援陣も踏ん張りきれなかった。オープン戦で防御率2・33をマークし、ホークス史上最強の冠を得た投手陣が出足からつまずいた。9回は守備も乱れた。「オリックスが自分らしい野球をして、こちらは持ち味を出せなかっただけ。力的にどうこうはない」。敗戦の要因は明らかなだけに、王監督の口ぶりも淡々としていた。

 大病を克服し、262日ぶりの公式戦。均衡を破ろうと6回はベンチを出て、左腕で的場の肩を抱き寄せながらスクイズを指示。7回の守りでは連打を浴びたところで、その的場をズバッと代えた。9回は江川や田上ら控え選手全員に、代打に備えてのスイングを命じていた。本番采配(さいはい)のブランクを感じさせることなく、積極的に動き、攻め抜いた。

 その姿勢はナインにも伝わった。仰天の2発で多村がホークスデビューを飾れば、小久保や川崎は積極的な走塁を披露した。看板の「TMKトリオ」で合わせて7安打の4打点。「追加点を取れなかったのがちょっとね。でも、打つ方はまあまあだ」。目指すストロング攻撃の威力を随所で発揮しただけに、うなずくことも忘れなかった。

 「僕の性格は飽きっぽいんだよ。好奇心は強いが、持続力がない」と自己分析したことがある。しかし、不思議と野球だけは別だったという。「これでもかという気持ちになれる。前に前にと考えられるから、これだけ続けられてきた」。再出発の一戦で足もとをすくわれたが、ショックはない。逆に闘志はかき立てられた。

 「答案用紙を出した後に、教科書を見て、職員室に忍び込んで書き直すわけにはいかないからね」。切り替えの大事さを強調して、球場を後にした。6年ぶりに味わう開幕黒星を王座奪回のエネルギーに替え、仕切り直しの1戦に挑む。(西口憲一)

(2007年3月25日付、西日本スポーツより)

※この年ソフトバンクは開幕2戦目で勝利。ゴールデンウイークの時期から一時首位を走った。優勝した日本ハムと終盤戦まで競ったものの、徐々に引き離され、最後は息切れして3位で終えた。クライマックスシリーズ(CS)は第1ステージでロッテに敗れた。

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