ソフト上野がよく口にする「神様」 1年延期、それぞれにとっての意味

西日本スポーツ

【記者コラム】

 ソフトボール女子日本代表のエース上野由岐子は、よく「神様」という言葉を口にする。2016年に膝の故障で長期離脱した時は「神様が休めって言ってくれているんだろうな」と振り返っていた。昨年、下顎を骨折して4カ月も実戦から離れた際は「『神様がそういうタイミングで何か気づかせてくれるのでは』と考えるタイプ。なので、けがに対しては基本あまりネガティブではない」と言っていた。

 今年の7月22日、自身38回目の誕生日に東京五輪の全競技の先陣を切ってソフトボールが実施されるはずだった。そのことについても「神様の存在を感じました」と語っていた。しかし、その神様は、上野たちアスリートどころか人類全体に大きな試練を与えた。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、近代五輪では史上初の延期が決まった東京大会。選手の立場ではピーキングと代表選考、活動資金などが大きな問題となる。難しさはあるが、選手たちは取材する立場から見ているこちらが思うほど悲観的な考えばかりではなく、事態を冷静に受け止めているとも感じた。

 ある選手は「中止ではないのでよかった。『幻の五輪』にはなりたくなかった」と安堵(あんど)していた。「自分にコントロールできないことは考えても仕方ない」といったコメントもよく見かけた。けがやアクシデント、調子の波…。アスリートは幾多の困難を経験している。そのたびに事実を受け入れ、乗り越えてきた。延期が与える影響は決して小さくはない。それでも中止という最悪のシナリオを免れたことで、それぞれが新たな目標へ進もうとしているのかもしれない。

 当然、人によって状況は違い、延期をプラスに捉えることができない選手もいる。体力面や金銭面など、自分の意思だけではどうしようもない事情があるのも事実だ。

 上野は頻繁に口にする「神様」について「自分の心の中にいる存在」と説明したことがある。神様が突如与えた1年という時間。受け止め方は個人に委ねられる。未知の事態に直面して何を決断し、どう過ごすか。アスリートたちが歩む道を私たちも大切に、丁寧に追っていきたい。(伊藤瀬里加)

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