バレンティンは優等生になった? もともとの走塁姿勢、データで検証してみた

西日本スポーツ 森 淳

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕白紙となったプロ野球だが、福岡ソフトバンクのウラディミール・バレンティン外野手(35)がここまで見せた姿は、ファンの期待感を高めている。ヤクルトから移籍し、オープン戦10試合で2発10打点、打率3割5分。バットに限らず積極走塁が目立った。過去、走塁面はしばしば懐疑的に見られてきた部分もあるが、実態はどうだったか。プロ野球のデータを独自に収集、分析するDELTA(デルタ)社の調べで検証した。(構成=森 淳)

 走塁に関する公式記録は盗塁数や盗塁成功率に限られるが、米国流の分析方法セイバーメトリクスにはwSB(weighted Stolen Base runs)や、UBR(Ultimate Base Running)といった指標がある。計算式は分析機関によるが、デルタではwSBはリーグ平均をゼロとし、盗塁によってどれだけ得点を増やしたかを算出(※)。UBRはプロ野球平均をゼロとして、各塁からの走塁でどれだけ得点を増やしたかを数値化している。二つを足した総合指標がBsR(Base Running)。ざっくり言えば「平均的な走者と比べて盗塁や走塁で何点増やしたか」ということだ。

 ※wSB=(盗塁数×盗塁得点+盗塁死数×盗塁死得点)-(リーグ全体の盗塁数×盗塁得点+リーグ全体の盗塁死数×盗塁死得点)÷(リーグ全体の単打+リーグ全体の四球+リーグ全体の死球-リーグ全体の敬遠)×(単打の数+四球の数+死球の数-敬遠の数)

 【表1】で昨季バレンティンを見るとwSBは-0・3。両リーグの規定打席到達者60人中42位だった。トップは38連続盗塁成功の日本新記録を樹立したヤクルト山田哲で3・9。一方UBRはと言うと、バレンティンは-0・6で、これは60人中36位だった。山田哲を見ると何と-4・9で56位。BsRで見ると、バレンティンと山田哲は変わらない。

 なぜこうなるか。デルタのアナリスト大南淳氏は「山田哲選手は昨季、二塁から外野への単打で本塁を狙ってのアウトが2度、三塁からタッチアップしてのアウトが2度ありました。後者はシーズンを通して失敗ゼロの選手がほとんど。チーム方針など走塁能力以外の要素もありますが、盗塁のメリットが消えてしまいました」と説明する。いかにアウトにならないことが大事か、という考え方だ。

 バレンティンは「無理をせず手堅い印象。全体的に平均よりちょっとだけマイナス」(大南氏)。例年UBRは規定到達者の“中の下”ぐらい。2018年は-0・1とほぼ平均レベルで、60人中29位だった。山田哲のような選手でも走塁死が多いと貢献度が下がることがあり、必ずしも俊足でなくとも、バレンティンのように堅実な貢献は可能だ。なお、これらの指標には、どれだけ内野安打にしたかという要素は含まれない。

 新天地で元気なバレンティンだが「より積極的になることでアウトを増やしてしまう可能性もあります。故障リスクも増すかもしれませんし、積極性がいい方向に出るとは限らない」(大南氏)との見方もある。この辺りはバランスだろう。

 【表2】でチームのBsRを見ると、昨季は西武が12球団で断トツの17・4。リーグ順位は西武に次ぐ2位のソフトバンクながら、BsRは12球団中7位の0・8と大差をつけられた。大南氏は「例えば走者二塁で外野への単打が出たケースが西武は153回、ソフトバンクは119回。それぞれアウトになったケースは西武1度、ソフトバンク3度でした。個人的にはベースの走力に差があると思いますが、出塁能力の差が、その走力を生かす機会の差にもつながっていると考えます」と語る。要因は複合的ながら、少しでも差を縮めたいところだ。

 ◆DELTA(デルタ) プロ野球データ分析会社。米国流のデータ分析手法「セイバーメトリクス」を得意とする。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)などを通じ球界への提言も。データを集計し算出した守備指標「UZR」や総合評価指標「WAR」などのスタッツや、アナリストによる分析記事を公開するウェブサイト「1.02 Essence of Baseball」(https://1point02.jp/)も運営。福岡・天神にデータ入力室を構える。

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