五輪バスケは面白い「驚きの場面が連続で起きる」日本初メダル狙うコーチに聞く1

西日本スポーツ 西口 憲一

 東京五輪に開催国枠で出場するバスケットボールの女子日本代表は、男女通じて日本のバスケ界初の「五輪メダル」に手が届く位置にいる。世界ランキング1位の米国を除けば実力は伯仲。出場を義務づけられていた2月の五輪予選(ベルギー)では、敗れたとはいえ、ランク上位のカナダやベルギーと接戦を演じた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月中の代表活動は中止となったが、1年延期となった来夏の本番で世界を驚かせる可能性を秘めている。代表でアシスタントコーチを務める恩塚亨氏(40)=東京医療保健大監督=に女子バスケの現在地を語ってもらった。(聞き手・構成=西口憲一)

 -昨秋のアジア・カップで4連覇するなど、女子は順調に強化が図られてきた。現時点で強化試合を含めて試合の予定もなく、Wリーグが打ち切られたことも含めて選手個々の実戦不足が懸念される。

 バスケットボールに限らず、命には代えられない。しっかりと受け止め、感染の予防に務めること。この時間を貴重な準備期間と捉え、映像などで分析を進めたい。

 -五輪予選のスコアはベルギー戦が84-92、カナダ戦は68-70。いずれも僅差だった

 ベルギーやカナダ(※1)は自分たちの「強み」と私たちの「弱み」をマッチさせてきた。日本の弱みを事前に分析して臨んできた。その「弱み」を補おうとすると、二の手、三の手を繰り出してくる。周到に準備をしていた。アジア・カップでオーストラリアや中国が自分たちの「強み」をぶつけてきたのとは違う。相手の「強み」に対して、プランAだけでなく、プランBやCまで準備して戦いに臨む必要があると痛感した。

 ※1…予選の時点でカナダは世界ランキング4位、ベルギーは同9位。同1位の米国は2018年ワールドカップ優勝国で、同10位の日本は開催国枠で五輪に出場する。

 -ベルギーには日本で開催された19年の国際強化試合で2戦2勝した。

 参考にならない。昨年はエース(※2)がいなかった。今回は彼女に大事なところでやられた。

 ※2…19年の米女子プロバスケットボールWNBAファイナルでMVPを獲得したエマ・メッセマン。

 -日本が取り組んできた、ペアで行うオフェンス戦術(ピックアンドロール、以下ピック)の完成度が一つの鍵となる

 前回16年のリオデジャネイロ五輪でも好機を演出したのは吉田亜沙美(JX-ENEOS)と渡嘉敷来夢(同)のピックを軸にプレーできたときだった。ピックは進化し、派生していくもの。ピックを輝かせられる切り口はたくさんある。

 -日本選手のストロングポイントは

 シュート力はある。正直「高さ」は二回りぐらい違う。体の厚みや幅もそう。ベルギーには何本もブロックされた。でも、渡嘉敷は素晴らしい。ベルギー戦でも1本、(ゴール付近の)ローポストで(体を張って)アタックしていた。

 -五輪予選で顕在化したもの、世界基準との差は。

 攻守の切り替え、得点力アップ、3点シュートの上積みはもちろん、重要なのは再現性。偶然ではない、というプレーをどれだけ理解して、準備できるか。適応能力、試合で何が起こるかを知っておくこと。さまざまな局面を想定した準備がいる。奇跡でも起きない限り、ゼロからは見つけられない。現場で勇気を持って決断するのは難しい。強い決断ができる「判断基準」を持とうと思ったら、準備…つまり前もって理解していないと見えるものも見えない。

 -リオのチーム(※3)は「史上最強」と呼ばれた

 今の代表の方が強いと思う。直接的なプレー面だけでなく、「チーム」全体としての力として。五輪予選で僕らのサイズ的な不利だけでなく、戦術的な不利を突いてくることも分かったので、そこはヒントになる

 ※3…1996年のアトランタ五輪以来、20年ぶりに8強入りした。

 日本の環境は恵まれている。NTC(東京・味の素ナショナルトレーニングセンター)もそうだし、各チームの練習環境が整っている。他国を見ても、なかなかない。体育館もあって、バランスの良い食事を取れて、トレーナーもいて…。そういう環境があるからバスケに打ち込める。そうして打ち込むプレーヤーと指導者の情熱。やっぱり日本の選手は練習をする。朝、シューティングをやって、午前、午後と練習をして、全体練習が終わっても、まだ体を動かしたり、個々のテーマに取り組んだりしている。合宿の期間や一日の練習時間はおそらく中国が一番だろうし、米国もトップオブトップはやっている。でも、日本の選手の練習量は世界でもトップクラスと誇れる。

 -以前から「指導者として五輪は勉強になる。NBAや世界選手権よりも洗練されたチームプレーを目の当たりにできる」と口にしている。

 ゲームの価値が非常に高い。国の威信を懸けたプレーをチームで成そうとする。国内の試合だと、力が突出した選手を止められない、という局面がある。五輪だと、そうはならない。チーム力を駆使した攻防が多い。アイソレーション(※4)なんてほとんどない。足が止まっているように見えても意図的に止まっている。男女問わず、五輪のバスケは面白い。「ああ、そういうふうに考えるんだ」みたいな驚きの場面が連続して起きる。

 ※4…ドリブル技術が高く、得点力のあるエースが一対一で勝負できるようにする攻撃のフォーメーション

(2に続く)

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