走り続ける元代表FW巻誠一郎の原動力「地震の時に得た自信」福祉、農業、コメンテーターも

西日本スポーツ 向吉 三郎

 2006年サッカーワールドカップ(W杯)ドイツ大会の日本代表FW巻誠一郎さん(39)が今春からTNCテレビ西日本の情報番組「ももち浜ストア」(月-金曜、午前9時50分から)でコメンテーターを務めている。14年に故郷のクラブで当時J2のロアッソ熊本に加入し、18年シーズンを最後に現役生活にピリオドを打った巻さん。熊本地震が発生した16年は復興支援活動に力を尽くした。新型コロナウイルスの感染拡大で停滞するスポーツ界でアスリートが見せた「スポーツの力」とは。引退後、熊本を拠点に福祉や農業などさまざまな分野で見識を広げる巻さんを電話で取材した。 (向吉三郎)

■ミニトマト栽培にベンチャー企業の社外取締役も

 ピッチで見せたひたむきで献身的な姿は引退した後も変わらない。「興味があること、誰かのためになることの中で、自分の価値をしっかり発揮できるところにフォーカスして、アクションを起こしています」。当時のジーコ日本代表監督がメンバー発表時に「タマ~ダッ(玉田)、マキッ!」と言うと記者がざわつくほどのサプライズ選出で2006年ドイツW杯の日本代表を射止めた巻さん。引退後は農業や福祉などさまざまな分野で見識を広げ、テレビでも活躍している。

 「サッカー選手として認知してもらった。その発信力を生かして農業や福祉の課題、いいところを知ってもらうことができる。それが僕の価値」。スクールなどサッカー関連の会社の経営に終わらず、地元の熊本県宇城市にビニールハウスをつくってミニトマトを栽培。主な目的は障害者の農業就労を支援する環境づくりだ。東京工業大と協働でタンパク質を研究するベンチャー企業の社外取締役も務める。

 スポーツの力、アスリートの力を実感したのは16年4月の熊本地震だった。発生直後から被災地を回って物資を届けるなど、支援活動に奔走。会員制交流サイト(SNS)を通じて情報を発信し続けた。「サッカー選手はピッチで表現するのが一番だと思っていたけど、人を巻き込み、アクションを起こすという部分は地震の時に得た自信だった」と振り返る。

 基本的に月曜に出演予定のももち浜ストアでは、スポーツだけではない多角的な視点や3児の父という目線を生かし、コメンテーターを務める。そのスタート直後から新型コロナウイルスの感染拡大という難題にぶつかった。巻さんらがメインのスタジオではなく、リモート出演するなど感染対策に注意を払っての放送が続く。

■考え方の幅広がった サッカー界に還元していきたい

 スポーツ界も延期、中止が相次ぐ。「経営的な体力がもたなくなると、プロスポーツの根底が崩れてしまう。そこにも目を向けてほしいけど」と危機感も感じているが、「スポーツは人の健康、生活の安定があって初めて楽しめるもの。今は命、健康を守ることが一番」と強調する。

 そんな中、アスリートたちはSNSや動画サイトなどで家にいるように呼び掛けたり、室内でできる運動を紹介したりして積極的に発信を始めている。「選手はリアルな(プレーをするという)部分で表現することが主だったが、今は映像などを使ったコンテンツをいろいろと生みだしている。新しい形ができつつある」と、影響力を生かした「スポーツの力」に期待を寄せている。

 「プロ選手のセカンドキャリアの一つの選択肢、一つの指標になる存在になれたらいい」。その先には一つの目標がある。「サッカーの世界にいるだけでは見えないものがたくさんある。考え方の幅が広がった。それをどんな形でもいいからサッカー界に還元していきたい」と実感を込めた。

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