バレー日本代表「お母さん」主将へのエール 後輩メダリストが語る荒木の厳しさと愛情

西日本スポーツ 西口 憲一

 東京五輪で2大会ぶりのメダル獲得を目指すバレーボール女子日本代表の中田久美監督(54)は今年、五輪3大会連続出場中のベテラン荒木絵里香(35)=トヨタ車体=を新主将に据え、ギアチェンジでチームづくりを加速させようとしていたところでの来夏への延期となった。2012年ロンドン五輪銅メダリストで、現在は解説などで活躍する迫田さおりさん(32)=鹿児島市出身=を電話インタビュー。五輪延期を「心のつながりを深める1年に」とプラスに捉え、現役時代に所属した東レや日本代表でチームメートだった「ママさんキャプテン」にエールを送った。(取材・構成=西口憲一)

【前編】

 -荒木が主将で迫田さんがアタッカーとして引っ張ったロンドン五輪での日本代表は、とにかくボールを「拾いまくった」印象が強い。

 「全員リベロ!」みたいでしたね。ボールを上げるというよりも、何とかして体に当てる。1センチでもいい。体に当てたら誰かがきっとつなげてくれる、と信じてプレーしました。

 つい、アタックという派手な部分に目がいきがちだけれど、レシーブだったり、諦めない姿だったり、目を血走らせてつないだボールが「1点」になる。たとえ目の前の「1点」にならなくても、その先の「1点」につながるかもしれない。

 私はレシーブが苦手でした。私の守備範囲を狭くしてもらい、他の選手に負担をかけてしまった分、仲間が必死に上げてくれたボールを絶対に決めるんだ、と言い聞かせて臨みました。自分のためではありません。誰かのために頑張る。そのことを教えていただいたのも荒木選手でした。

 -荒木といえば、身長186センチの大型ミドルブロッカーとして相手の攻撃を断ち切る鉄壁のブロックを誰もが思い浮かべる。一方でリーダーとしての存在感も欠かせない。

 誰が決めても自分のことのように喜ぶ。それが荒木選手です。自分がブロックで決めた1点ももちろんですが、仲間が決めた1点を同じように、いやそれ以上に喜んでくれる。そういう姿を誰もがコート内外で見てきたから、チームが一つになれた。助け合いの気持ちも芽生えた。絶対的な安心感がありました。

 -忘れられない言葉がある。

 私、昔から人との会話というか、コミュニケーションを取るのが苦手なタイプだったんです。バレーをやる上で、私に欠けていた部分でした。荒木選手はそれを分かっていらっしゃって(滋賀県大津市にある)東レの体育館で「リオ(迫田さんのコートネーム)を一人にしない! させない! ならないからね!!」と言われました。

 もちろん「一人にしない」「させない!」という言葉も響きました。でも、最後の「ならないからね!!」は思わずグッときました。荒木選手の言い方は「よしよし」というような優しい感じではないんですよ。厳しい言葉の中にも愛、本当の優しさが詰まっている。

 人に伝えるってエネルギーがいることですよね。プレー以外の面にも目を向けてくださって…感謝の思いしかありません。小学生のお子さんもいらっしゃる「お母さん」の荒木選手には、けがだけはしないように、あとは、あの熱い言動で引っ張る荒木選手の姿を見られれば私は十分幸せです。

 -五輪延期が決まったことでバレーボールの魅力を再認識する1年にしたい。

 「つなぐ」という意識は日本代表であっても、Vリーグであっても、ママさんバレーであっても変わらない。日本代表だって監督、その年々のチーム編成によってスタイルは変わる。でも「ボールをつなぐ」ことだけは変わらないし、貫かれていると私は思います。それがバレーの一番の魅力ではないでしょうか。

 社会全体がこういう状況で、学校の子どもたちもバレーをできない日々が続いていますが、バレーって本当に楽しいんです。ボールが床に落ちないように懸命に拾って、トスを上げて、決める。どれが欠けても点にはならない。決まったときは皆で喜び合える。心でつないでこそ、だと。

 だから、私は「心(こころ)」という言葉が大好きです。口にもしやすいし、バレーに最もなじむ言葉だと自分の中で現役時代から大切にしてきました。(つづく)

 ○…迫田さんは女子日本代表の主要大会をはじめ、Vリーグや「春高」のテレビ解説、クリニックを通してバレーボールと向き合いながら、生まれ育った鹿児島を中心に活動の場を広げている。

 鹿児島放送(KKB)の「ですです。」や南日本放送(MBC)の「週刊1チャンネル」にも月1レギュラーで出演中。一日も早く平穏な日々が戻り、全国を駆け回る日を心待ちにしている。

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