けがと闘った斉藤和巳氏が語るコロナ禍 苦痛の感覚「似ているな」あえて選手に送るエール

西日本スポーツ

 緊急事態宣言の延長が決定的となり、日本野球機構(NPB)が予定していたプロ野球開幕の日程を決めるスケジュールさえ、不透明な状況だ。新型コロナウイルスの新規感染者数に減少傾向が見られるとはいえ、依然として予断を許さない。ダイエー、ソフトバンクで絶対的なエースとしてチームを支え、自身も「先を見通せない」右肩のリハビリと6年も闘った、本紙評論家の斉藤和巳氏(42)が、開幕を待つ選手への思いや今季への特別な期待を語った。

動画】東浜とオンラインで対談する斉藤和巳氏

 今のこの状況で、選手にかける言葉は正直、思いつかない。1度の延期ならまだ、プロとして対応できるだろう。ただ、ここまで先が見通せず、練習もままならない状況は、自分自身を含め、誰も経験したことのない事態だからだ。自分が現役だったら、どう行動したかさえ、想像できない。自分のように、肩に「爆弾」のような故障を抱えたベテランは、どう精神状態を保つだろうか。体の状態はもちろん、モチベーションを維持することさえ、難しいのではないか。本来、アスリートは先のことを見据えながら、トレーニングを進める。そのスタートラインがなく、今しか見えない現実は想像を絶する。

 先日、自分が開設しているユーチューブチャンネルで東浜とオンラインで対談させてもらった。彼は「先のことをあまり考えずに、今できることに集中している」と話してくれた。開幕投手に指名されながら、その開幕が決まらず、調整できないもどかしさや不安もある中で、しっかりと対処していた。

 今季から選手会長を務める中村晃とも同じ形で、話をさせてもらった。彼も不安を明かしつつも、現実を見て、行動している。若手から経験豊富なベテランまで、多くの選手が不安を抱えながら、気持ちを折られずに環境を整えて踏ん張っているのを感じた。自分の同学年で阪神の(福留)孝介がまだ現役で頑張っている。選手たちの精神的な強さに、頭が下がる思いだ。

【動画】中村晃とオンラインで対談する斉藤和巳氏

 自分はかつて右肩の手術後、6年間のリハビリ生活を経験した。「先が見えない」ということだけは、今のこの状況と重なっている。あの時と今が「似ているな」と感じるのは、同じ一日がデジャビュのように重なっていくことだ。スタートが見えないまま、同じことを繰り返す毎日。あの苦痛の感覚は現状と近い。

 今、選手もそれに近い状況だと思う。東浜の言うように、先を見ず、ただただ、今できることを地道に頑張っているはず。あえて選手にエールとして言葉を送るなら、「いつか必ず開幕は来る。体さえ動けば、大丈夫。元気な姿でグラウンドに立ってほしい」ということくらいだ。

 中村晃がオンライン対談で明かしてくれたのが、ファン、お客さんの存在の大きさだ。お客さんがいることで頑張れていること、気持ちが高ぶること。「あの大観衆がいることが当たり前じゃない。またあのファンの前で試合がしたいと、改めて感じた」と話してくれた。それは選手全員が感じていることだ。

 いつか今季の開幕は来る。投げること、打つこと、走ること、選手のプレー一つ一つに、その強い思いがにじむと思う。「やっぱり野球は素晴らしい」。ファンや選手がそう感じるプレーが次々とつながっていくはず。プロ野球の長い歴史の中で、今季は特別なシーズンになる。(西日本スポーツ評論家)

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