こどもの日のドームに響く歌声 工藤ホークスの風物詩、その始まりは

西日本スポーツ 倉成 孝史

 もはや「こどもの日」の風物詩のように、バースデーソングが響いた。2019年5月5日、ヤフオクドーム(当時)でのオリックス戦。2盗塁などで勝利に貢献しプロ初のお立ち台に上がった周東佑京内野手(24)が、工藤公康監督(57)に向けて「ハッピーバースデー」を熱唱した。就任1年目の15年から昨季まで、指揮官の誕生日は5戦5勝。6連勝がかかっていた今年は開幕延期により残念ながら試合が開催されないが、これまでの孝行息子らの活躍ぶりを「日めくりソフトバンク」特別版としてお届けする。

 お世辞にも上手とは言えない微妙に音程のずれたバースデーソングが聞こえてきたのは、工藤監督がベンチ裏で定例の取材に応じていた時だった。波打つようなメロディーラインに、報道陣からの質問も一時ストップ。指揮官も、うれしさと笑いが交錯した表情で耳を傾けた。「気持ちがこもって、歌ってくれるだけで十分です!」。空気を読んだ56歳は次の質問が来るよりも先に、誕生日に白星を届けてくれたヒーローに熱く感謝した。

 「プレゼント」の声の主は、周東だった。開幕前に育成から支配下登録され、5月5日のオリックス戦は9度目の先発出場だった。両軍無得点の3回に、左翼フェンス直撃の三塁打をマーク。先制のホームを踏むと、2盗塁も決め勝利に貢献した。そして、待っていたのはプロ初のヒーローインタビュー。「めちゃくちゃ緊張した…。逃げ場がなかった」。運がいいのか悪いのか? よりによって「5・5」に記念すべき初のお立ち台に上がり、大観衆の前で歌声を響かせた。

 工藤監督の誕生日に白星と歌を贈る「流れ」をつくったのは、柳田だった。指揮官が就任1年目の15年。ロッテ戦の延長11回に右翼席へ推定140メートルの特大サヨナラ弾をぶっ放した。究極のサプライズプレゼントに、試合直後の指揮官は「すごかった。とんでもなかった。よく打ってくれた」と大興奮。さらにお立ち台に上がった柳田は「ご起立ください」と、観客席に呼びかけ「ハッピーバースデー、ディーア、かんとく~♪」と、大観衆とともに歌い指揮官を喜ばせた。

 翌16年の日本ハム戦は松田宣が決勝弾を放ち、誕生日の連勝をつないだ。敵地での試合で歌こそなかったが、ヒーローインタビューで「おめでとうございまーす!」と絶叫。翌17年も敵地でのロッテ戦だったが、2点を追う最終回にデスパイネが同点2ラン、上林が勝ち越しソロを放ち「5・5不敗伝説」を色濃くする土壇場でのドラマチックな逆転劇を決めた。

 そして18年のオリックス戦では、武田が球団12年ぶりとなる1安打完封の超快投で白星を運んだ。さらに音楽を趣味とする右腕は、お立ち台でもビブラートを効かせて「ハッピーバースデー ディア 監督~♪」と美声を披露。隣の柳田が思わず「うまっ!」とうなり、工藤監督も「うまいですね。『歌が最高だった』と書いといてください」と、顔をほころばせた。

 毎年必ず孝行息子らがいつも以上に活躍してきた「5・5」だが、今年は指揮官を喜ばせるバースデーソングが球場に響くことはない。緊急事態宣言の延長も決まり、新たな開幕日も依然不透明な状況だ。ただ毎年、バースデーの白星を心から喜びながらも工藤監督は照れくさそうに言っていた。「僕の誕生日なんてどうだっていいんです。秋に笑いたい」。我慢の「5・5」を乗り越え、秋には全員で必ず笑う。 (倉成孝史)

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