五輪延期「もう1年頑張らないといけないの?」ソフト上野の心の変化

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 ソフトボールが3大会ぶりに実施競技として復活する東京五輪の1年延期を受け、2008年北京五輪女子ソフトボール金メダリストの上野由岐子(ビックカメラ高崎)=福岡市出身=が本紙の電話インタビューに応じ、現在の心境や活動状況を語った。ソフトボールは開幕前の7月22日、上野の誕生日に全競技の先陣を切って始まる予定だっただけに「足をすくわれたという感じ」とショックを受けながらも、切り替えて前に進んでいる。 (聞き手・構成=伊藤瀬里加)

 「神様の存在を感じました」と話していた「7・22」の登板は幻となった。38歳の誕生日。誰よりも先に晴れ舞台に立つはずだった東京五輪は1年延期になった。

 「五輪を照準に今年はオフからギアを上げていた。残念というか、足をすくわれたという感じというか…。「もう1年、頑張らないといけないのか」という気持ちには正直、なりました」

 1月に故郷の福岡で千賀滉大(福岡ソフトバンク)、菅野智之(巨人)らと自主トレを行い、2月には温暖なグアムで投げ込んだ。東京五輪へ順調な調整を進めていた中、新型コロナウイルスの感染拡大はスポーツ界にも大きな打撃を与えた。

 「仕方がないという気持ちが一番ですかね。世の中の流れに乗っかっていくというか…。自分で何かを決断できるわけではないので。とりあえず、もう1年頑張らないといけない。しっかり、やるべきことをやって準備していくしかない」

苦境を受け入れ

 7月に向けて準備を続けてきた調整ペースをスローダウン。研ぎ澄ませてきた精神をオフにする作業は難しかった。

 「4月の1カ月間は、のんびりというか、モチベーションもしっかり下げて、休みを多く入れながらリフレッシュして切り替えました。(休日は)ずっとひたすら家にいました。最初は休む時間を楽しみながらやってきたんですけど、やることもだんだんなくなってきて…(笑)」

 所属先のビックカメラ高崎で感染予防に注意を払いながら練習やトレーニングを継続。未知の事態に直面した今、改めて競技と真摯(しんし)に向き合っている。

 「世界的にみんなが我慢をしていかないといけない状況だと思う。受け入れるというか、受け止めてというか。練習一つにしても、同じ環境で、同じ状況の中で他の選手よりもより多く何を重ねていくかということを大事にしながら取り組まないと。無駄な時間にしてはいけない」

 当面は9月に開幕予定のリーグ戦に向けて練習を続けるものの、先行きは見通せない。

 「試合がないと、感じることが少なくなってくる。あくまでもイメージの中でしか練習も積み重ねていけない。でも、みんなが同じ環境で調整している。いざ始まった時に、準備不足でけがをしましたとならないようにやるしかない」

 39歳で迎える1年後に向け、さらに進化するための時間と前を向く。

 「ソフトボールの技術面では新しい変化球に挑戦したり、今まで投げてきた変化球をさらにバージョンアップさせたりするというか、レベルアップさせていく感じ」

新たにヨガ挑戦

 グラウンドの外でも自分と向き合い、成長を求める姿勢は変わらない。

 「休みの日でも極力、家にいないといけないので、インターネットを使って教室に参加してみたりだとか、トレーニングを調べてやってみたりとか。そんな、普段だったらしないようなことをやれている」

 新たな挑戦の一つが、ヨガ。オンラインで講座を受講している。

 「先生に言われる通りに動いている。ストレッチみたいな感じで、呼吸とか(を意識する)…。思ったより体が硬かったなと思うところがあったり、やっているうちに前回より柔らかくなってきたなと思ったり。自分の体を把握するには、ためになっていると思う。トレーニングは自分の中で必要、不必要の目安がある。必要なところをうまく取り入れ、引き出しも増やしていけたら」

 延期後の競技日程は現在のスケジュールを踏襲する方針で、ソフトボールの開始は開会式2日前の7月21日になる見通しだ。五輪の“開幕”を告げるマウンドへ。鉄腕が再スタートを切った。

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