想定外「ラグビーロス」のいま振り返るW杯 8強見えた「リ~~~チ!」の大合唱

西日本スポーツ 大窪 正一

 国内にラグビーブームを巻き起こした昨秋のワールドカップ(W杯)日本大会閉幕から7カ月。新型コロナウイルスの感染拡大は、日本ラグビー界にも大きな影響を与えた。トップリーグは中止となり、6、7月に国内で予定されていた日本代表のテストマッチ計3試合も中止となった。想定外の「ラグビーロス」を嘆くファンのために、W杯で日本中を熱くした2試合を振り返った。

 アイルランド戦は、本調子ではない主将のリーチを先発から外した決断がポイントとなった。チームの精神的支柱だっただけに、結果次第では「ワンチーム」が空中分解するリスクもはらんだ采配。大会を左右する大きな賭けでもあった。

 決戦の6日前にジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が藤井雄一郎強化委員長に相談した「路上会談」で方針は固まった。決断が裏目に出た場合、ジョセフHCへの過度の責任追及を避けるため、藤井強化委員長は自身で責任を負う覚悟だったという。

 メンバー決定はHCの専権事項。約30分の話し合いの中で、藤井強化委員長は「負けたら『今回は藤井委員長の強い進言を受け入れた。残りの試合は私1人でメンバー決定する』と言ってくれ」と伝えたが、心配は杞憂(きゆう)に終わった。

 リーチが途中出場すると、会場に自然発生的に巻き起こった「リ~~~チ!」の大合唱。発奮したリーチも飛躍的に向上したパフォーマンスを披露した。WTB福岡堅樹が逆転トライを挙げ、試合終了時には4万8000人が万歳を三唱。チームの結束を強め、大会の流れを決める最高の“荒療治”となった。

 スコットランド戦は台風19号の影響で、勝負以外の部分でも選手はストレスを感じることとなった。試合が中止となっても決勝トーナメント進出が決まる立場だったが、藤井強化委員長は選手たちに「絶対に試合がある」と言い続けた。選手も「勝って決める」思いしかなかった。

 日本初のW杯3試合連続トライを決めた福岡にとって、スコットランドは因縁の相手だった。筑波大2年時の2013年に敵地で敗れた試合で2トライを挙げる一方、15年の前回W杯ではチームが唯一敗れたスコットランド戦のみの出場に終わっていたからだ。

 福岡は2トライを挙げ、防御でも鋭い出足で強豪国の猛攻を食い止めた。W杯を区切りに15人制代表活動の引退を公言していたスピードスターの集大成にふさわしいパフォーマンスだった。

 首脳陣の的確な判断も大きかった。「福岡はけがを抱えながら無理をさせると、パフォーマンスが発揮できない」と分析。痛めていた右脚の状態がある程度戻るまで限定的な起用にとどめたことが、歴史的勝利に貢献する活躍につながった。

 チームの情報分析力も光った。アイルランド戦では世界的司令塔SOセクストンの出場が困難であることを把握。戦術面で狙いを絞り込んだ。スコットランドに関しても、残暑が厳しい9月から日本国内で行ったキャンプで体力面が落ちていることをつかんでいた。情報の面からも「必然」ともいえる8強入りだった。 (大窪正一)

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